堕落ロイヤル聖処女
2018年11月14日
ぷちぱら文庫
著:雑賀匡
画:ぎうにう
原作:夜のひつじ
「先生、世界にはどうして不均衡が現れているのですか?」
セイナさまが口にするのは疑いばかりだ。
この少女はつまるところ頭がいい。
自らの役割について理解しており、周囲の不正を糺すことが根本的な解決にはならないことを理解している。現世を理解しているのだ。
だが、納得ができずに根源的な問いを抱え込み続けている。
「恋は……この世界を解決してはくれませんか?」
強く疑うということは、同時に強く信じたいということでもある。
信じていないものを疑うことなどありえないのだ。
つまり、彼女は神も恋も疑っていない。疑っているのは、自分自身の知性と存在。
「……気持ちは分かりますよ」
俺がこの世界で土いじりや大工仕事ばかりしているのは、どうにも自分の存在が信じられなかったからだ。土を耕して、種を播き、水をやって芽が出るところを見る。あるいはボートを作って釣りをする。
そんなことを幾度となく繰り返し、辛うじて疑いから解放されたのだ。
ただ、彼女に同じことをしろとは言えない。もうひとつ……疑いから解放されるための手段があることに気付いたからである。
いや、この小娘は最初からその話をしていた。
だからこそ、俺をこんな場所に連れて来たのかもしれない。
「俺が相手でよければ……恋をしてみますか?」
「その言葉を待っていました」
「俺は、いまあなたのことが好きになりました。それでいいですか?」
「構いません」
不遜な言葉に、聖女さまはにっこりと微笑んだ。
「私もいまからあなたを好きになります。あなたに恋をすると決めました」
「すると、まるで出会ったときから好きだったような気分になってくるでしょう?」
「その通りですね。こうなるべくしてなった……という気がしてきました」
魔王が倒された。
世界が変わる。
「セイナ」
呼び方も変わる。
俺は目の前の聖女に触れたいと思った。人の知性と存在に屈服してみたいと思った。 夢中になってみたいと思い始めていた。
「……はい、先生」
「恋をして世界を作り替えたいですか?」
「そう……思います。もっとも弱いものが、もっとも強く救われるような……いまの不幸と幸福が入れ替わるように」
「俺も、この世界がそんな世界であったらいいなと思います」
「聖女たる私は、きっとすべてのものにへりくだって仕えるべきなのでしょうね」
「そうすればセイナさまが一番弱く、もっとも強く救われる?」
「そうなることを希望します」
セイナは小さく頷いた。
「私は……救われたいです。私のちっぽけな悩みや苦しみが、救いに繋がってほしいと心の底から思っています。だとしたら、一番初めに必要なことは──」
少しだけ考えた後、彼女は羽織っていた法衣を脱いで傍らに置いた。
「やはり、謝ることでしょうか」
「かもしれません。俺も同じようにしましょうか?」
「いえ、先生は別の世界からやって来た……この世界では無垢な存在ですから」
そう言いきってしまえるとは思えない。
だが、とりあえず納得しておくことにして、空白の玉座に腰を下ろした。
セイナは俺を咎めるわけでもなく、王座の間の入り口に──民草に向かって跪くと、両手を床について深く頭を下げていく。
「申しわけありません。私はいままで十分に幸せでした。飢えることも、病むこともなく、健やかに育ってきました。ごめんなさい」
「……いい格好だね」
玉座に座っていると、彼女の下着に包まれたお尻が丸見えの状態だった。
歳の割りに豊かな胸も、重力によって垂れ下がっている。
「そうしていると、少しは気が晴れる?」
「そうですね。皆にこんな姿を見せても、いったいなにに対して謝っているのかと混乱させるでしょうけど……でも、ずっと謝りたかった」
セイナは「ごめんなさい」と小さく呟きながら目を閉じる。
肩や腰が小さく震えていた。
「先生、見てくれていますか?」
「見てるよ。卑しい謝罪だ。自分だけ救われたくて、そんなことをしているんだから」
「皆が……世界が救われてほしいです。ただ、やっぱり私も救われたいです」
「だから恋もすると?」
「はい。いまはまだよく分かりませんけど……私より先に、あなたが救われてほしいと、そう思えるようになりたい」
「俺は十分に救われていますよ。この世界にくることができたんだから」
「それは本当に救いだったのでしょうか?」
「……………………」
なんのためにここにいるのか。
それは──おそらく、永遠に解けない謎だろう。
「俺がここに来たことで救われるとしたら……それはセイナのような少女を、自らの手で慰みものにできたときでしょうね」
俺は改めてセイナの身体を眺めた。
成熟一歩手前の魅惑的な肢体。元いた世界では決して望むべくもなかった、十代の清らかな少女との交際。そして──交接。
「……してくださってもいいんですよ」
「本当に?」
「きっと、もっとも弱くて卑しい者が、もっとも強く救われるときが訪れるんですもの」
「いまのこの世界は間違っていますか?」
「間違っています。だから私は、この身体で卑しい欲望に仕えたいと思います」
「俺の抱いている劣情は卑しいものですか?」
「卑しくていいと思います。私のことを娘のようだと可愛がってくれる神官が、私と同じ年頃の愛人を囲い、ときどき私を昏い目で見るように」
身体の奥がカッと熱くなった。
セイナのことをそういう目で見る大人は、決してひとりやふたりではないはずだ。
彼女が民衆から人気があるのは、聖女だからというだけではない。思わず手折りたくなるような美しさを備えているからだ。
「……慰みものにしてくださいますか?」
「下劣な方法でよければ」
「それでいいです」
なにかを期待するように、少女は小さく肩を震わせた。
「たとえば、ここにこうして素足で触れてみるとか」
「……はうっ!」
足を伸ばして、聖女さまの股間を軽く撫でる。
屈辱的な姿勢を取っている彼女を、野良仕事をしてから洗ってもいない足先で辱める。
高貴な少女をぞんざいに扱っているという、昏い悦びが胸に広がっていった。
「ところで、聖女さまはどうやって男女が子を成すかご存じで?」
「せ、世界樹が花を咲かせ、実を成して……落ちた種が赤子になります」
「──というのが、おとぎ話だということは知っていますよね?」
「……はい」
足の親指でゆっくりと股間を撫でる。
柔らかくて温かな感触がしたが、湿り気などはほとんど感じられない。
あたりまえだ。まだ処女だ。自分で触ったこともほとんどないのだろう。
ここに自分の醜悪なモノが埋まることを想像すると、どうしようもないほどの淫欲に駆られてしまう。けれど、まだだ。まだまだだ。
この世界に転生したことで許されている──というのであれば、考えつく中でもっとも酷い方法で彼女の処女を奪ってやりたい。
浅ましい俺は神を試したかった。恋を試してみたかった。
「めちゃくちゃになりたいですか?」
「……なりたいです」
セイナはおずおずと頷いた。
「世界がカクメイされるなら、高貴でいることになんの意味もないですから」
「ならば……その下着を脱いで、大事な部分を見せてください」
「……………………」
一瞬の逡巡があったが、そろそろと伸ばされた指が下着にかかる。
俺は聖女が自ら恥部をさらす姿を、背後から悠々と眺めた。
こんなことをしていいのか──と頭の奥で警鐘が鳴る。けれど、圧倒的な熱が身体の表面を包み込んだままだった。
どうせ一度は死んだ身だ。
異世界に転生? 正気の沙汰とは思えない。
元いた世界があるということも、自分がそこにいたという確証もない。卑近なものに触れて正気を保たないと、俺は狂ってしまうかもしれない。
「はぁ……うう……」
下着を脱ぎ捨てたセイナが恥ずかしげに身動いだ。
だが、羞恥に耐えるその仕草は、まるで誘っているようにしか見えなかった。
「あ、あまり見ないでください」
「どこを?」
そう質問すると、彼女は困ったように口を噤む。
「俺の郷里では、その露わになった部分をおまんこといいます」
自ら口にした言葉に笑ってしまいそうになった。
その卑猥な単語の響きが、俺がここではない場所から来たことを思い出させる。
「お、おまんこ……?」
「子宮、子種、精液。こんな言葉はこちらにもあるのでしょうね。分かりますか?」
「分かり……ます」
「では、もう一度訊きます。聖女さまは、男女がどうやって子を成すかご存じで?」
「わ、私の子宮に……精液が注がれれば……」
「この恋が続けば、俺の子を孕んでくれますか?」
「それがあなたの望みなら」
セイナの言葉に獣欲が沸き立った。
この恋は続くに決まっている。
何故なら、この娘は聖女の立場から逃れることはできない。ここに居続けなければならない。他に頼る人もおらず、なにより自分の務めを知っている。
解放されることを望みながらも、自分で自分を縛り続けている。
俺に股を開き続けてくれる。
「……そうすることで、あなたの苦しさが和らぐのであれば」
「苦しさ? 俺は苦しさなんて感じていませんよ?」
「そんなはずはありません。この世界には、あなたの父も母もいません。肉親もいません。私と……同じです」
「……………………」
「父のない子は神のない子です。私が肉親になって差し上げます」
聖女であるが故の尊大な目線。
けれど、いまはそれが少しだけ心地よく感じられた。
こんな姿勢を取りながらも、本質的な高貴さは薄れていない。自分が高位にあることを示すかのように──この娘はどこまでも聖女だった。
「可哀想なあなたのために祈ります。幾重もの木霊に誓って」
「あまり勝手なことばかり言わないでほしいですね」
再び足を伸ばし、乾いた指先で少女の温かい肌に触れた。
そこはどこまでも瑞々しく──そして疎遠に感じられる。この身体はまだ俺のものではなく、これから手に入れるものなのだと改めて感じさせられた。
「ん……せ、せめて、手で……」
「卑しい手段のほうがいいでしょう」
「大切な場所……なのに……」
だからこそだと言わんばかりに、俺は形に沿って足指を動かしていった。
どこまでも柔らかな感触。肉の唇はぴったりと閉じ合わさったままで、足指が入り込むほどの隙間もなかった。
「こんな辱めも……愛撫と言えるのでしょうか」
「相手にどう扱われるのか、次の瞬間にはどうなっているのか──それが分からないことを愛撫というのです。そうでなければ自慰と同じです」
「……じい?」
さすがにそこまでは知らないようだ。
「自分で自分を慰めること。いまのセイナの場合で言うと、手でおまんこに触れること」
「そんなことしません」
「これからはしてもいいですよ。俺がやり方を教えるので」
こんなふうに──と足を一定のペースで動かしていく。
押しつける力をわずかに強くして、ぴったりと閉じた陰唇を撫で上げ続ける。
すると、次第にセイナの反応が変化していった。
「な、なんだか……もどかしいです」
「そうでしょうね。他人のすることなので」
「されてるんですね……私、初めて……」
「皆がっかりするでしょうね。異邦人の俺にこんなことをされていると知ったら」
「構いませ……ん。それでいいんです。あなたはひとりきりの人だから……あ、ぅうう」
反応が少しずつ強くなっていった。
同時に、足先にじっとりとした湿り気を感じるようになる。
「ここの感覚に集中して」
「はい……あ、はぁ……ん、あぁ……」
しめやかな声とともに、尻の肉がゆっくりと揺れる。瞬きを繰り返しているのは、他人がもたらす感覚をじっくりと味わっているからだろう。
汗が浮かび、体温が上がってきているのが分かった。
十代少女の甘酸っぱい匂いを感じながら、俺は供物として捧げられた身体を見下ろし、足指をじっくりと這わせ続けていった。
「あっ……ん、だんだん……気持ちよく、なってきました……」
「濡れていますからね」
「……っ」
「濡れるという身体の仕組み自体は知っているんですね」
「はい、女官たちが話しているのを聞いて。それがこれなんだ……と先日分かって」
「先日?」
「土いじりをしているあなたの背中を見ていたとき、愛おしく感じて……それから、汗とは違うものが少しだけ……」
「……………………」
「書物にも、女は異邦の血を受け入れなければならないと……」
それは俺への憐れみなのかもしれない。
元いた世界が間違っていると感じ、別の世界を希求していたことは確かだ。
その願いに能うなにかを俺が備えていたのか、あるいは願いに能うほどの欠落を備えていたのか分からないが──なんだか無性に腹が立った。
腹が立って、足指を強く押し込んだ。
「んうっ!? あっ、あああ……」
足の親指が粘膜の感触に包まれる。熱い。体温以上の熱さに触れると同時に、微かにぬめる液体がまとわりついてきた。
「はぁ……あ、うっ、ううう……」
聖女の情けない声に気分が晴れる。
引き抜くと、指先が愛液でぬらぬらと光っていた。潤滑油を得た指で、再び秘部を上下になぞり上げていく。さっきよりもスムーズに動く。
「ふぁ……んっ! こ、これをいつまで続けるのですか?」
セイナの声色が余裕のないものに変わっていった。
「続けることになにか問題が?」
「膝が痛いです」
素直で子供っぽい言葉。思わず笑ってしまいそうになる。
「分かりました。そろそろいいでしょう」
「あ……」
足を離すと、明らかに名残惜しそうな声が上がった。
わずかに震え続けている尻を見下ろしていると、悦びのようなものが湧いてくる。
さらけ出された陰裂とうしろの穴。美しい少女は、こんな場所まで美しい。
「あの……先生? もういいんですか?」
「今日のところはこれくらいで。ただ、最後にひとつ口上を述べてもらいましょうか」
身体を起こして不思議そうな顔をするセイナ。
玉座から立ち上がった俺は、そんな彼女に近付き──耳元で言うべき言葉を囁いていく。
「セイナの、おまんこを愛でてくださって、ありがとうございます……?」
「上出来です」
また笑いそうになってしまった。聖女にこんなことを言わせる日がくるとは思わなかったし、自分にそんな欲望があるとも思っていなかった。
平坦すぎる己の感情が、めずらしく高ぶっていることを意識する。
もちろん、勃起もしていた。
「膝が痛いんでしょう。今日はもういいですよ」
「あの……ひとつだけ教えてください。私、どこかおかしくなかったですか?」
「おかしいとは? どこのことですか?」
俺の反問に彼女は小さな声で答える。
「……おまんこ」
「きれいだった」
即答すると、セイナは小さく身体を震わせた。
この続きは、11月30日発売のぷちぱら文庫『堕落ロイヤル聖処女』でお楽しみください!!
(C)TASUKU SAIKA / 夜のひつじ
セイナさまが口にするのは疑いばかりだ。
この少女はつまるところ頭がいい。
自らの役割について理解しており、周囲の不正を糺すことが根本的な解決にはならないことを理解している。現世を理解しているのだ。
だが、納得ができずに根源的な問いを抱え込み続けている。
「恋は……この世界を解決してはくれませんか?」
強く疑うということは、同時に強く信じたいということでもある。
信じていないものを疑うことなどありえないのだ。
つまり、彼女は神も恋も疑っていない。疑っているのは、自分自身の知性と存在。
「……気持ちは分かりますよ」
俺がこの世界で土いじりや大工仕事ばかりしているのは、どうにも自分の存在が信じられなかったからだ。土を耕して、種を播き、水をやって芽が出るところを見る。あるいはボートを作って釣りをする。
そんなことを幾度となく繰り返し、辛うじて疑いから解放されたのだ。
ただ、彼女に同じことをしろとは言えない。もうひとつ……疑いから解放されるための手段があることに気付いたからである。
いや、この小娘は最初からその話をしていた。
だからこそ、俺をこんな場所に連れて来たのかもしれない。
「俺が相手でよければ……恋をしてみますか?」
「その言葉を待っていました」
「俺は、いまあなたのことが好きになりました。それでいいですか?」
「構いません」
不遜な言葉に、聖女さまはにっこりと微笑んだ。
「私もいまからあなたを好きになります。あなたに恋をすると決めました」
「すると、まるで出会ったときから好きだったような気分になってくるでしょう?」
「その通りですね。こうなるべくしてなった……という気がしてきました」
魔王が倒された。
世界が変わる。
「セイナ」
呼び方も変わる。
俺は目の前の聖女に触れたいと思った。人の知性と存在に屈服してみたいと思った。 夢中になってみたいと思い始めていた。
「……はい、先生」
「恋をして世界を作り替えたいですか?」
「そう……思います。もっとも弱いものが、もっとも強く救われるような……いまの不幸と幸福が入れ替わるように」
「俺も、この世界がそんな世界であったらいいなと思います」
「聖女たる私は、きっとすべてのものにへりくだって仕えるべきなのでしょうね」
「そうすればセイナさまが一番弱く、もっとも強く救われる?」
「そうなることを希望します」
セイナは小さく頷いた。
「私は……救われたいです。私のちっぽけな悩みや苦しみが、救いに繋がってほしいと心の底から思っています。だとしたら、一番初めに必要なことは──」
少しだけ考えた後、彼女は羽織っていた法衣を脱いで傍らに置いた。
「やはり、謝ることでしょうか」
「かもしれません。俺も同じようにしましょうか?」
「いえ、先生は別の世界からやって来た……この世界では無垢な存在ですから」
そう言いきってしまえるとは思えない。
だが、とりあえず納得しておくことにして、空白の玉座に腰を下ろした。
セイナは俺を咎めるわけでもなく、王座の間の入り口に──民草に向かって跪くと、両手を床について深く頭を下げていく。
「申しわけありません。私はいままで十分に幸せでした。飢えることも、病むこともなく、健やかに育ってきました。ごめんなさい」
「……いい格好だね」
玉座に座っていると、彼女の下着に包まれたお尻が丸見えの状態だった。
歳の割りに豊かな胸も、重力によって垂れ下がっている。
「そうしていると、少しは気が晴れる?」
「そうですね。皆にこんな姿を見せても、いったいなにに対して謝っているのかと混乱させるでしょうけど……でも、ずっと謝りたかった」
セイナは「ごめんなさい」と小さく呟きながら目を閉じる。
肩や腰が小さく震えていた。
「先生、見てくれていますか?」
「見てるよ。卑しい謝罪だ。自分だけ救われたくて、そんなことをしているんだから」
「皆が……世界が救われてほしいです。ただ、やっぱり私も救われたいです」
「だから恋もすると?」
「はい。いまはまだよく分かりませんけど……私より先に、あなたが救われてほしいと、そう思えるようになりたい」
「俺は十分に救われていますよ。この世界にくることができたんだから」
「それは本当に救いだったのでしょうか?」
「……………………」
なんのためにここにいるのか。
それは──おそらく、永遠に解けない謎だろう。
「俺がここに来たことで救われるとしたら……それはセイナのような少女を、自らの手で慰みものにできたときでしょうね」
俺は改めてセイナの身体を眺めた。
成熟一歩手前の魅惑的な肢体。元いた世界では決して望むべくもなかった、十代の清らかな少女との交際。そして──交接。
「……してくださってもいいんですよ」
「本当に?」
「きっと、もっとも弱くて卑しい者が、もっとも強く救われるときが訪れるんですもの」
「いまのこの世界は間違っていますか?」
「間違っています。だから私は、この身体で卑しい欲望に仕えたいと思います」
「俺の抱いている劣情は卑しいものですか?」
「卑しくていいと思います。私のことを娘のようだと可愛がってくれる神官が、私と同じ年頃の愛人を囲い、ときどき私を昏い目で見るように」
身体の奥がカッと熱くなった。
セイナのことをそういう目で見る大人は、決してひとりやふたりではないはずだ。
彼女が民衆から人気があるのは、聖女だからというだけではない。思わず手折りたくなるような美しさを備えているからだ。
「……慰みものにしてくださいますか?」
「下劣な方法でよければ」
「それでいいです」
なにかを期待するように、少女は小さく肩を震わせた。
「たとえば、ここにこうして素足で触れてみるとか」
「……はうっ!」
足を伸ばして、聖女さまの股間を軽く撫でる。
屈辱的な姿勢を取っている彼女を、野良仕事をしてから洗ってもいない足先で辱める。
高貴な少女をぞんざいに扱っているという、昏い悦びが胸に広がっていった。
「ところで、聖女さまはどうやって男女が子を成すかご存じで?」
「せ、世界樹が花を咲かせ、実を成して……落ちた種が赤子になります」
「──というのが、おとぎ話だということは知っていますよね?」
「……はい」
足の親指でゆっくりと股間を撫でる。
柔らかくて温かな感触がしたが、湿り気などはほとんど感じられない。
あたりまえだ。まだ処女だ。自分で触ったこともほとんどないのだろう。
ここに自分の醜悪なモノが埋まることを想像すると、どうしようもないほどの淫欲に駆られてしまう。けれど、まだだ。まだまだだ。
この世界に転生したことで許されている──というのであれば、考えつく中でもっとも酷い方法で彼女の処女を奪ってやりたい。
浅ましい俺は神を試したかった。恋を試してみたかった。
「めちゃくちゃになりたいですか?」
「……なりたいです」
セイナはおずおずと頷いた。
「世界がカクメイされるなら、高貴でいることになんの意味もないですから」
「ならば……その下着を脱いで、大事な部分を見せてください」
「……………………」
一瞬の逡巡があったが、そろそろと伸ばされた指が下着にかかる。
俺は聖女が自ら恥部をさらす姿を、背後から悠々と眺めた。
こんなことをしていいのか──と頭の奥で警鐘が鳴る。けれど、圧倒的な熱が身体の表面を包み込んだままだった。
どうせ一度は死んだ身だ。
異世界に転生? 正気の沙汰とは思えない。
元いた世界があるということも、自分がそこにいたという確証もない。卑近なものに触れて正気を保たないと、俺は狂ってしまうかもしれない。
「はぁ……うう……」
下着を脱ぎ捨てたセイナが恥ずかしげに身動いだ。
だが、羞恥に耐えるその仕草は、まるで誘っているようにしか見えなかった。
「あ、あまり見ないでください」
「どこを?」
そう質問すると、彼女は困ったように口を噤む。
「俺の郷里では、その露わになった部分をおまんこといいます」
自ら口にした言葉に笑ってしまいそうになった。
その卑猥な単語の響きが、俺がここではない場所から来たことを思い出させる。
「お、おまんこ……?」
「子宮、子種、精液。こんな言葉はこちらにもあるのでしょうね。分かりますか?」
「分かり……ます」
「では、もう一度訊きます。聖女さまは、男女がどうやって子を成すかご存じで?」
「わ、私の子宮に……精液が注がれれば……」
「この恋が続けば、俺の子を孕んでくれますか?」
「それがあなたの望みなら」
セイナの言葉に獣欲が沸き立った。
この恋は続くに決まっている。
何故なら、この娘は聖女の立場から逃れることはできない。ここに居続けなければならない。他に頼る人もおらず、なにより自分の務めを知っている。
解放されることを望みながらも、自分で自分を縛り続けている。
俺に股を開き続けてくれる。
「……そうすることで、あなたの苦しさが和らぐのであれば」
「苦しさ? 俺は苦しさなんて感じていませんよ?」
「そんなはずはありません。この世界には、あなたの父も母もいません。肉親もいません。私と……同じです」
「……………………」
「父のない子は神のない子です。私が肉親になって差し上げます」
聖女であるが故の尊大な目線。
けれど、いまはそれが少しだけ心地よく感じられた。
こんな姿勢を取りながらも、本質的な高貴さは薄れていない。自分が高位にあることを示すかのように──この娘はどこまでも聖女だった。
「可哀想なあなたのために祈ります。幾重もの木霊に誓って」
「あまり勝手なことばかり言わないでほしいですね」
再び足を伸ばし、乾いた指先で少女の温かい肌に触れた。
そこはどこまでも瑞々しく──そして疎遠に感じられる。この身体はまだ俺のものではなく、これから手に入れるものなのだと改めて感じさせられた。
「ん……せ、せめて、手で……」
「卑しい手段のほうがいいでしょう」
「大切な場所……なのに……」
だからこそだと言わんばかりに、俺は形に沿って足指を動かしていった。
どこまでも柔らかな感触。肉の唇はぴったりと閉じ合わさったままで、足指が入り込むほどの隙間もなかった。
「こんな辱めも……愛撫と言えるのでしょうか」
「相手にどう扱われるのか、次の瞬間にはどうなっているのか──それが分からないことを愛撫というのです。そうでなければ自慰と同じです」
「……じい?」
さすがにそこまでは知らないようだ。
「自分で自分を慰めること。いまのセイナの場合で言うと、手でおまんこに触れること」
「そんなことしません」
「これからはしてもいいですよ。俺がやり方を教えるので」
こんなふうに──と足を一定のペースで動かしていく。
押しつける力をわずかに強くして、ぴったりと閉じた陰唇を撫で上げ続ける。
すると、次第にセイナの反応が変化していった。
「な、なんだか……もどかしいです」
「そうでしょうね。他人のすることなので」
「されてるんですね……私、初めて……」
「皆がっかりするでしょうね。異邦人の俺にこんなことをされていると知ったら」
「構いませ……ん。それでいいんです。あなたはひとりきりの人だから……あ、ぅうう」
反応が少しずつ強くなっていった。
同時に、足先にじっとりとした湿り気を感じるようになる。
「ここの感覚に集中して」
「はい……あ、はぁ……ん、あぁ……」
しめやかな声とともに、尻の肉がゆっくりと揺れる。瞬きを繰り返しているのは、他人がもたらす感覚をじっくりと味わっているからだろう。
汗が浮かび、体温が上がってきているのが分かった。
十代少女の甘酸っぱい匂いを感じながら、俺は供物として捧げられた身体を見下ろし、足指をじっくりと這わせ続けていった。
「あっ……ん、だんだん……気持ちよく、なってきました……」
「濡れていますからね」
「……っ」
「濡れるという身体の仕組み自体は知っているんですね」
「はい、女官たちが話しているのを聞いて。それがこれなんだ……と先日分かって」
「先日?」
「土いじりをしているあなたの背中を見ていたとき、愛おしく感じて……それから、汗とは違うものが少しだけ……」
「……………………」
「書物にも、女は異邦の血を受け入れなければならないと……」
それは俺への憐れみなのかもしれない。
元いた世界が間違っていると感じ、別の世界を希求していたことは確かだ。
その願いに能うなにかを俺が備えていたのか、あるいは願いに能うほどの欠落を備えていたのか分からないが──なんだか無性に腹が立った。
腹が立って、足指を強く押し込んだ。
「んうっ!? あっ、あああ……」
足の親指が粘膜の感触に包まれる。熱い。体温以上の熱さに触れると同時に、微かにぬめる液体がまとわりついてきた。
「はぁ……あ、うっ、ううう……」
聖女の情けない声に気分が晴れる。
引き抜くと、指先が愛液でぬらぬらと光っていた。潤滑油を得た指で、再び秘部を上下になぞり上げていく。さっきよりもスムーズに動く。
「ふぁ……んっ! こ、これをいつまで続けるのですか?」
セイナの声色が余裕のないものに変わっていった。
「続けることになにか問題が?」
「膝が痛いです」
素直で子供っぽい言葉。思わず笑ってしまいそうになる。
「分かりました。そろそろいいでしょう」
「あ……」
足を離すと、明らかに名残惜しそうな声が上がった。
わずかに震え続けている尻を見下ろしていると、悦びのようなものが湧いてくる。
さらけ出された陰裂とうしろの穴。美しい少女は、こんな場所まで美しい。
「あの……先生? もういいんですか?」
「今日のところはこれくらいで。ただ、最後にひとつ口上を述べてもらいましょうか」
身体を起こして不思議そうな顔をするセイナ。
玉座から立ち上がった俺は、そんな彼女に近付き──耳元で言うべき言葉を囁いていく。
「セイナの、おまんこを愛でてくださって、ありがとうございます……?」
「上出来です」
また笑いそうになってしまった。聖女にこんなことを言わせる日がくるとは思わなかったし、自分にそんな欲望があるとも思っていなかった。
平坦すぎる己の感情が、めずらしく高ぶっていることを意識する。
もちろん、勃起もしていた。
「膝が痛いんでしょう。今日はもういいですよ」
「あの……ひとつだけ教えてください。私、どこかおかしくなかったですか?」
「おかしいとは? どこのことですか?」
俺の反問に彼女は小さな声で答える。
「……おまんこ」
「きれいだった」
即答すると、セイナは小さく身体を震わせた。
この続きは、11月30日発売のぷちぱら文庫『堕落ロイヤル聖処女』でお楽しみください!!
(C)TASUKU SAIKA / 夜のひつじ