ぱいずりチアリーダーVS搾乳応援団!
2017年12月5日
ぷちぱら文庫
著:あすなゆう
画:金城航
原作:マリン
12月13日発売のぷちぱら文庫『ぱいずりチアリーダーVS搾乳応援団!』のお試し版です!


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純情なチアリーダーたちに女の色気を教えるには、ぱいずりするのが一番!?
 襟の高さ十センチ、裾まで長く伸びた学ラン姿で、高柳慎は応援団の練習の真っ最中だった。

「フレーーーッ! フレーーーッ! お・お・と・りっ!」

 大声を張りあげてエールを送るが、一緒に練習する団長にはまだまだらしく、

「声が小さい、もう一回!!」

 と、凛とした声で檄が飛ぶ。

 かれこれ一時間も練習させられてさすがに声にも震えが出ているのだが、厳しい団長は許してくれない。

「あ、あのさ、ゆぅ姉……ちょっと休ませて……」
「馬鹿もの! ゆぅ姉ではないっ、ここでは団長と呼ばんかぁ!!」

 慎が弱音を吐こうものなら、自慢のハリセンで彼に活を入れるのは、団長のゆぅ姉こと、侑子だった。
 慎の義姉で女性のはずだが、性格は男の中の男だ。
 学ランに赤鉢巻を締めて、団長ルックで慎の前に立っていた。流れるような流麗な黒髪と学ランを押し上げる胸乳の豊かな膨らみがなければ、男と間違うような凛々しい格好だ。
 団員は侑子と慎の二人のみ、応援団はこの鳳学園内でも指折りの超弱小部活だった。
 慎は練習の傍らグラウンドの中央へ目を向ける。
 そこには慎らの弱小応援団とは真逆の、全国優勝を嘱望された学園を代表する部活、チアリーディング部『パープルフェニックス』の面々が練習していた。

「GOGO! オオトリ! レッツゴー、オオトリ、イェーーー!!」

 女子らの揃った快活な声が慎のいるグラウンドの端まで聞こえてくる。スタイル抜群の女子らによる揃った演技に、慎はつい見とれてしまう。

「……チアリーディング部、やっぱり凄いよなあ……」
「貴様……なにをよそ見している、練習中だぞ」
「よそ見っていうか、その向こうのチア部の練習を見てただけで……あっ!」

 ついなにげなくチア部のほうを見ていたと口にしてしまい、慎はしまった、と思う。応援団の練習中、しかも侑子は大のチアリーディング部嫌いなのだ。

「貴様……『ちありぃでぃんぐ部』を見ながら、でれでれと鼻の下を伸ばしていたというのか……」

 侑子のこぶしがぶるぶると震えるのが傍目にもわかった。

「ううっ……」
「応援団員でありながら、あのような破廉恥な部にうつつをぬかすとは……あの団旗に申し訳ないと思わんのかぁ!」

 そういって侑子がハリセンを向けた先には、立派な団旗が風にたなびいている。
 こうなってしまったら、もう慎に口をさしはさむ余地はない。

「いいか愚弟よ! 応援団とは質実剛健! ビッと気合いの入った、男の世界であるべきなのだ!!」
「はぁ……」

 凛々しい学ラン姿のよく似合う侑子だったが、女だったようにも慎は思う。でも、一度火のついた侑子を説得するのは難しそうだった。幼い頃からの長い付き合いで、慎が一番よくわかっていた。

「それに比べて……ふん、あのちありぃでぃんぐ部など、破廉恥の極み!」
「ちょっ……ゆぅ姉、それは言いすぎ……」

 侑子の声が次第に大きくなっていく。
 怒りとともに、もはや本人でも暴走が止まらなくなってきているのだろうか。慎への怒りがだんだんチアリーディング部への批判にすりかわってきていた。近くにいるチアリーディング部の誰かに聞こえたら、と思うと慎は気が気でなかった。

「なにが言いすぎなものか! 太もももあらわなこすちゅうむに身を包み、男の劣情をそそるへろへろ踊りに黄色い声……」
「へろへろ踊り……」
「所詮ちありぃでぃんぐ部など、男好きのあばずれ女どもの集まりにすぎん!」

 侑子がそう言い切った直後、チアリーディング部のほうから、誰かが大股で歩いてくる。

「ちょっと! 聞き捨てならないわね!!」

 怒気をはらんだその声から、聞こえているのは間違いなかった。

「我が『パープルフェニックス』に対する侮辱の数々……取り消して、謝罪しなさい!」

 やってきたのは見事な金髪ツインテールに、強気な釣り目の、小さな女の子。チアリーディング部で人気ナンバー2の桜美散だ。
 超爆乳ぞろいのチアたちの中で、唯一、美乳と言っていい大きさの胸の持ち主だ。ちょびっとSっ気漂うツンツンした雰囲気が、小柄で愛らしい容姿とミスマッチで、それが人気の秘密なのだろう。

「ふっ……侮辱だと? どのあたりがそうだったのか、さっぱりわからんが……」

 余裕たっぷりに返す侑子。それがまた美散の怒りを誘う。

「な、なんですって?」
「だってそうだろう? 事実だものな……破廉恥こすちゅうむに、へろへろ踊りは!」
「……くっ! それが侮辱だって言ってるのよ!」

 今にも侑子に襲いかからんばかりの美散をマネージャーの蔵真琴が止めに入る。
 ショートカットの愛らしい、物静かでおとなしいが、しっかりもののチアリーディング部の縁の下の力持ちだ。

「ま、待って美散……落ち着いて……!!」
「は、放しなさいよ、マコ!」

 大柄な真琴に押しとどめられて、美散は身動きが取れずにいた。

「だめだよ、ここで怒って暴力事件でも起こしたら、全国大会に向けたみんなの努力が、無駄になるんだよ!」

 それを聞いた侑子が、わざと頬を差しだして、美散を挑発する。

「ほほう……それはいいことを聞いた。では殴れ、好きなだけ殴るがいいぞ? ん?」
「こっ、この女ぁっ!!」

 よほどチアリーディング部が嫌いなのか、自分の義姉ながらやることが徹底していると思う。
 グラウンドではじまった突然の応援団対チアリーディング部の争いに、他のチア部の部員も駆けつけてくる。

「ゆ、侑子さん。私たちに失礼があったのなら、謝りますから……」

 侑子をなだめようと話しかけてきたのは、チア部人気ナンバー1の雫石ちえりだ。
 チアのユニフォームを押しあげるような、ひときわ大きな爆乳に、すらりと伸びた長い脚、誰からも愛される素直で愛想の良い性格、そして誰よりも努力家とあって、人気ナンバー1になるのもうなずけた。
 長い髪を後ろでポニーテールにまとめていて、そのテールの端が風になびく様は彼女の魅力を存分に引きたてていた。

「ちょっ……バカなの、チエ!? こんな奴に謝る必要なんかないわよっ!!」
「だって……美散ちゃん、私たちのほうもなにか、悪かったのかもしれないし……」

 こういう性格の違いがナンバー1とナンバー2を大きく分けているのかもしれない。
 ただ、今回は侑子がチア部批判を大声でしていたのが問題で、あきらかに応援団側に落ち度があった。

「ふぇ~~ん、皆さぁん……ケンカはだめです。仲良くしましょうよぉ……」

 ちょっと離れたところから、声がかかる。オロオロとした様子で事態を見守っているのは、チアリーディング部のキャプテン、松嶋夕菜だ。一学年上の先輩で、チア部キャプテンだが、そうは思えないほどおっとりとした子だ。すごいところのお嬢様だという話もある。

「いいじゃないの、キャプテン……好きにやらせとけば」

 さらに離れた場所から、興味なさそうに声をかけるのは早瀬蒔帆、チア部の副キャプテンだ。いつもクールで冷静沈着、部の実質的なまとめ役だった。
 今回の諍いにも興味が薄いらしく、腕組みしたまま、近寄ってくることもない。

「うーんでもでもぉ……蒔帆ちゃん……」

 訴えかけるような夕菜の声を、

「そんなに止めたきゃ、水でもぶっかけてやれば?」

 ぴしゃりと跳ねのける。

「貴重な練習時間を、なんだと思ってるのかしら、まったく……」

 侑子と美散の争いよりも練習時間が減ることをなにより嫌っているらしかった。

「美散、練習に戻りなさい! 私たちは全国優勝を狙っているのよ」

 蒔帆に言われて、美散は我に返る。

「ふぅ……。そうね、私としたことが、こんな相手につい取り乱してしまったわ」

 真琴の制止の手をそっと振りほどくと、美散は余裕たっぷりに髪をかきあげる。

「こんな相手……だと?」

 美散の見下した態度がまた、侑子の怒りに火をつけたらしい。ぴくり、と眉を吊り上げた侑子に対し、反撃とばかりに余裕の微笑を浮かべる美散。

「だってそうでしょう? 我がチアリーディング部が、たった二人の弱小応援部の言うことなんて、いちいち気にしてられないわ。そうね……例えるなら、王侯貴族が下民の言うことなど、歯牙にもかけないようなものかしら……おーっほっほっほっ!」
「な……なんだと、貴様!」

 怒りのあまりハリセンを取り落とす侑子。拳はぎゅっと握りしめられ、怒りにわなわなと震えていた。
 慎は直感でそのヤバさを理解した。拳で語らいをはじめるのは時間の問題だ。

「そもそも今時、応援団なんてちょっと……ねぇ? そう思わない、みんな!」
「き、貴様ぁ! 歯をくいしばれぇーーーーい!!」

 言うが早いか、侑子の鉄拳が美散をめがけて飛ぶ。

「ゆぅ姉……ダメだっ!!」

 侑子の沸点の低さにあきれつつも、今は止めに入るしかない。
 ただでさえ弱小応援団。この状況でチアリーディング部ナンバー2の顔に傷でもつけようもんなら、よくて廃部、下手すりゃ退学も免れないだろう。
 慎は侑子の鉄拳制裁を止めようとして??足元のなにかを踏んづけてしまう。

「げっ!?」

 それは誰かが捨てたバナナの皮。慎はなにかのコントみたいに踏んづけたバナナに滑って、そのまま侑子と美散、二人の間に倒れこんでしまう。

「……まふっ」

 慎は顔にエアバッグみたいにふわふわとやわらかななにかがあたったことだけは理解する。

「う、ううぅん……なんだこの、いい匂いのする柔らかいものは……」

 わからず、もがきながら、やわらかいものを揉みしだくと、先端にあるこりこりしたものが指先に触れる。慎はそれを確かめるように左手を動かす。

「あ……あぁんっ!」

 色っぽい声だが、どうやら侑子の声らしい。
 視界が完全にさえぎられて、わけがわからないまま慎は右手を動かす。

「や……やあぁぁんっ!」

 今度は美散の恥じらいに満ちた声。
 慎は体勢を立て直しつつ、恐る恐る視線を上げる。

「……あっ」

 そこで、美散と侑子、二人に目があってしまう。耳たぶまで真っ赤にした二人は、体を小刻みに震わせつつ、慎から視線を外さずにいた。

「…………ぅぅ、アンタ……」
「き、貴様という奴は……」

 足を滑らせた拍子に、慎の顔面は二人のおっぱいサンドイッチの具になったらしい。

「い……いやああぁぁぁーーーーーーーーーーーーっ!!」

 一瞬の後、状況を完全に把握した美散が、金切り声を上げる。

「ち、違うんだ美散ちゃん、これはわざとじゃ……!」
「ど……どさくさに紛れてなにやってんのよ、このスケベ! 女の敵!!」

 周囲のチアリーディング部のほぼ全員が、慎を汚物でも見るかのような目で見ていた。

「……ちょっ……俺、いきなり四面楚歌ですか!?」

 直後、背後にただならぬ殺気を二つ感じ、慎は振りむく。
 そこには背景に怒りの焔を燃えあがらせた侑子、そして同じく怒りの青白いオーラを全開にした美散、二人が仁王立ちになっていた。

「くっ、くぉの……エロ愚弟! 歯をくいしばれぃ!!」
「言い訳無用よ、このド外道エロ変態っ!」
「違うんだよ……これは……」

 なにか言い訳しようとする前に、侑子と美散の鉄拳が繰りだされる。

「……ぐはあぁっ!!」

 慎の顔面に、二つの拳がクリーンヒットしたのだった。
 自分の運の悪さを呪いつつ、慎の意識は奈落の底へと落ちていったのだった。

      ◇

 ──放課後。
 慎と侑子は鳳学園近くの駄菓子屋前で、並んでアイスを食べていた。
 侑子は駄菓子屋が大好きで、悪くなった機嫌も駄菓子ひとつでよくなるという単純なところがあった。
 慎がソーダ味のアイスを頬張ると、口の中の傷にアイスが染みる。もちろん傷は侑子と美散、二人のパンチを受けてできたものだ。

「なぁ……愚弟よ」

 アイスの袋を開けつつ、急にシリアスな声で話しかけてくる侑子。

「な、なんだよゆぅ姉……あらたまって……」
「このままでは、我が応援団は確実に廃部だ。五十年の伝統を誇る、鳳学園応援団が、な……」

 話の合間にアイスしゃぶりつつだと、ちょっとシリアスさに欠けたが、確かに侑子の言うことは事実だ。

「でも、仕方ないんじゃないかな、ゆぅ姉……いまどき応援団って……」
「ゆぅ姉ではないっ、団の話をしている時は、団長だ!」
「は、はいっ、あ、いや……押忍ッ」

 慌てて言い直す慎を見て、侑子はくすりと笑った。

「フッ、まったく貴様という奴は……小さい頃からいつもいつも……」

 侑子は慎の義理の姉だが、親同士の再婚は二人がかなり小さな頃で、本当の姉弟のように育ってきた。
 幼い頃から、高圧的で、慎はまったく侑子に頭が上がらなかった。
 応援団に入ったのも、鳳学園に入学が決まった途端、勝手に入部届けを出されたからだ。

「ともあれ、この苦境を打破せねばな、貴様につづく新入部員も確保せんとな」

 侑子の考えもわからないでもなかったが、いかんせん応援団に対して、学園側はひどく冷たかった。
 運動部の活動を応援する部活として、同様の活動をしているチアリーディング部と応援団、二つの部活が必要なのかという話も出て、部費は削られる一方だった。
 部室だって正式な場所を確保してもらえず、校舎裏の倉庫を間借りしていた。
 全国優勝目前という看板をかかげ、湯水のように予算を使うチアリーディング部の影響をモロに受けているのが応援団なのだ。
 今は侑子が教員や体育会など各所に必死に交渉して、存続を認めさせているような状態だった。

「再び応援団が花形となるためには、やはりチアリーディング部の存在が邪魔だな。愚弟よ、なにかいい案はないか?」
「邪魔っていっても、どうしようもないよね。向こうには全国大会優勝が狙えるとか、実力が伴っているわけだし……」
「実力だと? 貴様、我が応援団に実力がないとでもいうのか!」
「そうじゃないけど……」
「むう、やはり、もっと練習するしかないのか……」

 侑子は食べたアイスの棒をくずかごに放りこむと、すっくと立ち上がる。

「実力をつけるには、今よりも、さらに激しい練習をするより他になし! さぁいくぞ!! 今から夜中までエールを切る練習だ!」

 慎の襟首を掴むと侑子は闘志を燃やし、歩きはじめる。

「ちょっ……ええ!? も、もう勘弁してよ、ゆぅ姉ぇ~~……」
「情けない声をだすんじゃない! 貴様それでも男か!!」
「だ、だってさぁ……俺、朝から叫びっぱなしなんだぜ? 今日はもう、終わりにしちゃってさぁ……」

 懇願する慎の前で、侑子は両手の指をポキポキと鳴らす。
 鉄拳制裁、五秒前のモーションだ。

「こぉの軟弱者がぁ!! 歯を食いしばれぇ!」
「ホントに勘弁してくれえぇ~~~……!!」

 こうして慎は強引な義姉にいつも尻に敷かれていた。

      ◇

 慎は疲れた体に鞭打って、夕方のグラウンドを歩いていた。

「あ……いたたたた……ちくしょうめ……」

 ゾンビさながらにふらふらと前へ進む。全て侑子の練習という名のシゴキが原因だ。部自体は弱小だが、練習量は他校の応援団よりも多い。
 今日の追加練習は発声千回。旗振り千回。
 しかも団長の侑子は用事があるとかで先に帰ってしまっていた。もう練習をサボればよかったのだが、長年、侑子の尻に敷かれたことによる忠犬体質が指示をまじめに実行してしまうのだった。

「……おっ?」

 ふと見ると、スタンドにいたのは、チアリーダーのちえりだ。

「GOGO、レッツゴー、オ・オ・ト・リ! ファイトーーッ!」

 スタンドから、グラウンドの端へ向かって大声でエールを送っていた。
 夕日を浴びて踊る姿は、疲れきった慎の目にはまるで女神のように映った。

「あっ……応援団員さん、お疲れさま」

 スタンドに上がった慎は、ちえりの練習の邪魔をしないように、そっと帰るつもりだったが、さすがにそばを通った時に、気づかれてしまったみたいだった。
 見上げると、練習で健康的な汗を流したちえりが、スタンド階段の数段上に立っていた。

「こんな時間まで、たった一人で練習してるなんて、すごいね。えらいなぁ」
「……ふふふっ」

 慎が感心して声をかけると、ちえりはさも愉快そうに微笑んでみせる。

「えっ? な、なにか俺、おかしなこと言ったかな?」
「だって……あなただってそうでしょ? 一人で、こんな時間まで練習」
「えっ……俺が練習してたの、知ってたんだ?」
「うん、だって応援してたもの。あなたのこと……」

 両手のぽんぽんを、ちえりは愛らしく胸の前に寄せて見せる。

「……えっ?」

 その言葉に不意を打たれ、慎の胸がどきり、と高鳴る。
 慎はちえりが自分のことを気にかけてくれているのか、と一瞬思ってしまう。

「ただ漫然と練習するより、頭の中で誰かを応援していたほうが、身が入るの」
「あぁ、そういうことか……」

 慎は自分の思いが勘違いだったことを知る。

「なんだか、そっちも練習大変そうだなぁって思ったから……。ごめんね、勝手に応援しちゃって……」

 てへ、っといたずらっぽくちえりは舌を出す。いちいち仕草が憎めなくて、慎はその笑顔に引きこまれてしまう。

「いやいや、ちえりちゃんに応援してもらえるなんて、光栄だよ」
「えっ? 私の名前……どうして知ってるの?」

 ちえりが驚いたように目を丸くする。自分が学園でどれだけ注目されてるのか自覚がないらしい。

「そりゃあ知ってるさ。花形チアリーディング部の、エースだもんな」
「エ、エースだなんて……私なんて、まだまだ……」

 ちえりは頬を赤く染めて、少し俯きぎみになる。そんな彼女をいとおしく思いながら、慎は声をかける。

「もう日が暮れるし……ちえりちゃんも、そろそろ練習終わりにしない?」
「そう……だね。私も帰ろっと」

 ちえりはうなずくと、傍らの柵にかけてあったスポーツタオルで汗を拭きはじめる。

「あっ……そういえば、応援団員さん」
「うん?」
「あなたって、優しい人なんだね……」

 いきなり、優しいと、ちえりに言われて、慎は、どきり、としてしまう。彼女に好意を持たれてうれしくないはずはなかったが、それ以上に戸惑いが大きかった。

「な、なにが……?」
「止めようとしてくれたんでしょ? 侑子さんと、美散ちゃんの喧嘩を……」

 あの時の侑子と美散のバトルのことを言っているらしく、合点がいった。
 ほぼ全員が慎のことをド変態を見る目で見ていた。けれど、ちえりだけはどうやら別だったらしい。
 ますます、慎はちえりのことが好きになってしまう。

「まぁ……それは確かにそうだけど……結果、痴漢扱いされちゃねぇ」
「あっ、そ、そうだったね。殴られたの、大丈夫だった?」
「うん、まぁなんとか……応援団のシゴキで、殴られ慣れてるからさ、俺。えへへへ」

 ちえりに心配されると、それはそれでうれしくて、少しだけ侑子と美散に感謝してしまう。

「ねぇ、よかったら、応援団員さんの名前、教えてくれないかな? 私だけ名前を知られているんじゃ、不公平だもの」

 興味深そうに、慎をじっと見るちえり。いきさつはどうあれ、チアリーディング部のエースに興味を持ってもらえるなんて、滅多にないことだ。
 慎は男らしく胸を張って、ちえりに向き直った。

「……慎。高柳慎だよ」
「えっ? 高柳って……侑子さんの?」
「あぁ、ゆぅ姉……応援団長の、高柳侑子の弟だよ。ただし、義理だけどね」
「ふぅん、そっか、そうなんだぁ」

 ちえりは感心しながら、脇の座席に置いてあったスポーツドリンクのボトルに手を伸ばす。
 けれど、慎との会話に気を取られていたせいか、その指先はボトルをつかむことはなく、倒してしまう。

「あっ!」

 スタンドを転がり落ちて行くボトルを追って、ちえりは思わず一歩踏み出す。そのつま先が階段を踏み外し、彼女は身体のバランスを崩してしまうのだった。
 一連の動きが、慎の目にはスローモーションのように映る。
 けれど、練習の疲れから体は鉛のように重く、慎はちえりを助けるために、とっさに動けないでいた。

「きゃあああぁぁぁーーーーーっ……!!」

 ちえりは叫びとともに、階段から足を踏み外して、落ちてくる。
 慎は疲れた体を引きずって、なんとか、彼女を助けようと飛びこんで行く。

「ちえりちゃん……ッ!!」

 階段を数段転がったところで、慎はなんとかちえりを受けとめるのだった。

「きゃあっ……!?」

 体に響く衝撃が、ちえりの落下を辛うじて阻止できたことを示していた。

「い、いてててて……」
「あいたた……ご、ごめんなさい、大丈夫ですか?」
「い、いや……大丈夫っていうか……」
「て、いうか……?」

 慎はちえりの下敷きになるような体勢で彼女を受けとめていた。彼女の体重が乗って苦しいのは確かだったが、顔だけは別で、極上の乳房のマシュマロが幸せな気持ちを運んでくれていた。
 慎の顔の上にはちえりのおっぱいが覆いかぶさっていたからだ。

「きゃあぁっ!? わ、私ったら、なんてことを……!!」

 そのことに気づいたちえりが、必死に身もだえして慎の上からどこうとする。だが、その動きがかえって、慎の顔面におっぱいを押し付け、その脂肪の弾力を伝えることになってしまう。

「むほぅっ……むぶっ、ちょ……い、息が……!」
「きゃあああぁっ! ごめんなさい、ごめんなさいッ!」

 ちえりが焦りもがくほどに、慎の顔は彼女の豊かなバストに押しつぶされ、窒息寸前になる。
 さわやかな汗の香りと胸乳の柔らかさ、チアのユニフォームのすべすべした感触に襲われながら、慎の意識は遠のいていく。
 このまま窒息死しても、我が生涯に一片の悔いなし、と慎は思う。

「むぶっ、むほっ、い、いや、大丈夫……俺なら大丈夫だから、落ち着いて……!」
「いや……あ、あぁん、しゃべらないでください……声が、おっぱいの先の敏感なところに響いてッ! ぁはあぁぁッ!」

 二つの乳房を思うさまに慎にぐりぐり押し付けてから、ちえりはようやく腕を突っ張ればいいことに気づいたらしい。
 腕立て伏せの要領で伸び上がると、ちえりのおっぱいはようやく慎の顔を離れた。
 幸せを体現した膨らみが二つ、顔を離れて行く瞬間だった。あまりの名残惜しさに、慎は心の中で涙した。

「あ……い、いたっ……?」

 次の瞬間、ちえりは急に顔をしかめた。

「ど、どうしたの? どこか、痛めた?」
「は、はい……なんだか、足首が……」

 慎がちえりの足のほうを見ると、座席の隙間に彼女の足首がはまりこんでいるらしかった。
 階段を転倒してくる途中で、足を変に挟んで捻ってしまったみたいで、ありえない方向に足先が曲がっていた。

「……うっ!?」
「ど、どうかしたんですか……?」
「い、いや、ちえりちゃんは見ないほうがいい、あ、足が……!」

 言われて、ちえりは自分の足首をそっと見る。

「え……え、ええっ!? きゃああああああぁぁぁっ……!!」

 座席の隙間に挟まり、おかしなほうに曲がった自分の足首を見て、ちえりの顔からみるみる血の気が引いていった。

「ち、ちえりちゃん、しっかり……! ええいっ……」

 慎はそのまま失神してしまったちえりを抱えて、慌てて近隣の救急病院へと走った。
 あの時、もっと早く飛びだしていれば、ちえりは怪我せずに済んだかもしれない。そんな思いが頭をよぎる。
 けれど、後悔してもすでに起きたことはどうしようもなかった。
 骨に異常こそないものの、足首の捻挫。全治一ヶ月。絶対安静。
 それが、ちえりの診断結果だった??。

      ◇

 慎とちえりが病院から戻ってくると、非常呼集がかけられたらしいチア部の面々が、部室に集まっていた。
 事情を知っているということもあり、慎も同席を求められる。
 集まったチア部のメンバーにちえりから、怪我の説明をする。

「そんなわけで、骨には異状はなかったんですけど……右足首の捻挫で……」

 落ちこんだ様子で話すちえりの足首には、添え木が当てられ、真っ白な包帯が巻かれている。歩行には介助が必要なほどだ。

「それで……怪我の程度は? 全治何ヶ月だって言ってた?」

 蒔帆が問いかけた途端、ちえりの表情に苦渋の色が浮かぶ。

「お医者さまは全治一ヶ月だって……そう言ってました」
「そ、そんな……それじゃあ、全国大会は……?」

 おろおろした声で、真琴が言う。一ヶ月後といえば、全国大会の予選がはじまる頃だ。
 黙りこんでしまう、ちえり。それ以上、真琴もなにも言えなくなってしまう。
 全国大会に向け、人一倍練習していたちえり。そのことを知っている真琴だからこそ、その心の痛みもわかるのだろう。

「かわいそう……ちえりちゃん、一生懸命練習してたのに……」

 キャプテンの夕菜は涙声になっていた。

「だ、大丈夫だよ……安静にさえしていれば、こんな怪我、すぐに治っちゃうんだから。そうすれば、元どおり……」

 笑顔で強がって見せるちえりに、蒔帆が注意する。

「……ダメよ。今ここで無理をしたら、それこそ一生チアリーディングなんてできなくなるわよ」
「そうよダメよ、チエ」

 それまで珍しく黙りこんでいた美散が、ぴしゃりと言い放つ。

「……えっ?」

 弾かれたように、驚いた顔で美散のほうを見るちえり。

「アンタがそんなに頑張っちゃうから、私たちは甘えちゃうのよね……」

 美散は自分に言い聞かせるように話す。

「チームのエースと、女子寮の管理人まで兼任させてね」

 そのまま美散がぐるりと部室を見回すと、みんな俯いて黙りこんでしまった。

「確かに……少々オーバーワークだったかもしれないわね……副キャプテンとして、気づけなかったことを、恥ずかしく思うわ……」

 蒔帆は冷静になって、自らを振りかえっているようだった。

「そ、そんな……それじゃあキャプテンである私は、もっとダメダメだよぉ……」

 夕菜が泣きそうな声を出すと、真琴もその言葉にかぶせるように、自身を責める。

「わ、私だって……マネージャー失格です……」

 蒔帆の言葉を皮切りに、部室の雰囲気が一気に重苦しくなる。
 誰もが口を開かず、沈黙の苦しい時間が流れる。
 その静寂を破ったのは、勢いよく開かれた部室のドアの音だった。

「……なんだなんだぁ、辛気くせえ! 葬式でもやってんのか、ここはぁ?」
「コーチ、いらしてくれたんですね」
「お待ちしていました、コーチ」

 蒔帆と夕菜は救いを求めるように開いたドアのほうを見る。
 入ってきたのは、チアリーディング部のコーチ鷹山皐月だ。
 チア部のOGで、年は二十代後半、実践的な厳しい指導で部をここまで強くしてきた、いわゆる鬼コーチだ。
 皐月はゆったりとした動作で部室内を睥睨すると、傍らの椅子に腰をおろした。

「あ~~、どっこいしょっと!」

 慎の座っているところまでお酒の匂いが漂ってくる。手に持っているのは明らかに酒瓶だった。
 その中身を一口あおると、皐月はちえりに視線を向ける。

「雫石ぃ」
「は、はいっ……」
「……で、どうなんだよ、ケガの具合は」
「は、はいっ、あの……」

 心配しているというよりも脅迫しているような口調の皐月に、ちえりは詳しく怪我の内容を説明する。

「……ふん、それじゃあ大会直前まで、練習も、女子寮の管理も無理……っつう、ことだな」
「そ、そんな……コーチ、確かに練習は無理ですけど、女子寮の管理ぐらいなら……」

 ちえりの言葉に眠たげだった皐月の目が、突然鋭くなった。

「なんだよ……アタシの言うことが、聞けないってのかい?」
「い、いえ……そんなことは……」
「言うとおりにするんだね。もう一度、スタンドに立ちたいなら、ね……」

 皐月の迫力の前にちえりもそれ以上なにも言えなくなってしまう。

「蔵ぁ……ちょっと、こっちおいで」

 皐月は真琴を呼び寄せると、その乳房を無遠慮に触りはじめる。

「あ……あんっ!? あの……コ、コーチ?」
「ふん……多少ボリューム不足だけど、身長も体型も、よく似てるね……よしっ」

 パン、と真琴の両肩に手を置くと、皐月は彼女の身体をくるりとみんなのほうに向けた。

「みんな聞きな。これから大会まで、この蔵が雫石の代わりだよ!」

 いきなりの皐月の発言にみんな、驚きの声をあげる。一番驚いていたのは、いきなり指名された真琴だ。

「大丈夫さ。蔵ぁ、マネージャーだろ? フォーメーションも、コンビネーションの動きも、頭に入ってんだろ?」
「は、はい……一応は……」

 真琴の返答を聞いて、皐月はにやりと不敵に笑った。

「じゃあ問題ない。大会直前まで練習に参加して、せいぜい雫石を休ませてやんな」

 皐月は全員を見回すと、有無を言わせない迫力で宣言する。

「大会まで雫石は完全休養させて、怪我の治療に専念させる。これがアタシの方針さ」

 そこで酒瓶を再びあおると、ぷは、と満足そうな声を出す。あまりの飲みっぷりに慎が見とれてしまうほどだった。

「あとはだ、蔵の代わりのマネージャーと、雫石の代わりの女子寮の管理人だが??」

 皐月の視線がなぜか、慎に向けられる。

「うちの大事な選手をキズ物にした男には責任を取ってもらわないとな、いいよな」
「ちょっ! 人聞きの悪いことを言わないでください、俺はむしろ彼女を……!!」
「彼女を……なんだい?」
「な、なにって……そのぉ、助けようと……」
「ふん……しかし結局は、雫石を守ることができなかったんだろ? 結果的には同じことさ」

 慎は皐月に痛い所を突かれて、黙りこむしかなかった。
 なにも言えなくなった慎に代わってチアリーダーたちが皐月に反対の声をあげる。美散など、慎のことをケダモノ呼ばわりして、寮の管理人になることを必死で反対する。
 皐月は目の前の机を強く叩いて、全員を黙らせた。

「大衆の面前で、尻や太股をあらわにして応援するチアリーダーが、男子が一人、寮に入ってきたぐらいで大騒ぎするな!!」

 全員をぎろりと睨み付けると、皐月は話をつづける。

「これはアタシの方針だ。従えないのなら、今すぐここから出て行くんだね」

 それだけ言い置くと皐月は部室を出て行くのだった。
 困惑したままの慎のそばにちえりが近寄ってくると、思いつめたような顔で頭を下げる。

「お願い……します」

 他の部員もちえりにしぶしぶ従うのだった。

「はは、はははは……わ、わかりました。どこまでできるか、わかりませんけど……。よろしくお願いします」

 慎はそう返事するしかなかった。こうして慎はなし崩し的に、チアリーディング部のマネージャー兼、女子寮の管理人としてしばらく働くことになってしまった。

      ◇

 翌日、慎が学校から戻ると、チア部の女子寮の前には人だかりができていた。部員の中心にいるのは、皐月で、美散と睨みあうような格好で対峙していた。

「……鷹山コーチ、それに美散ちゃんがどうして……」

 慎は嫌な予感がして足早にそこに近づく。

「……で? なんなんだよ桜ぁ、わざわざアタシを呼び出して、話ってのは」

 明らかに不機嫌そうな鷹山コーチと、美散ちゃんが睨みあっている。周りでは、ちえりをはじめとするチア部の面々が、固唾を呑んで見守っていた。

「もう一度、管理人の選定をお願いします!」
「はぁ? なにを言ってるんだお前は。夕べ全員一致で決めたろうが……」
「私は、納得してません!」

 やはり揉めているのは慎が管理人になったことだった。確かにいきなり男子が女子寮の管理人と言われて、納得する女子はいないだろう。
 さらに激しく抗議する美散を黙らせたのは、いきなり響いた重苦しく、大きな音だ。

「……ひっ!?」

 美散は声にならない悲鳴をあげる。彼女の視線の先には皐月の拳があった。彼女の鉄拳が寮のコンクリート壁にめりこみ、見事なひび割れが走っていた。

「そこまでだ、桜。つべこべ言うなら、部をやめてもらうよ」

 皐月は周囲を威圧するように見回すと、言葉をつづける。

「全員、聞けぇ! 男を管理人に選んだ理由を今から教えてやる!」
「な……なんですか、その理由とは……?」

 美散は青ざめながらも問う。

「おめーらのチアリーディングに、足りないモノを補うためだ。まず、度胸。変に恥ずかしがって、人前で大胆に開脚できねぇ……だから演技に華がねぇんだ」

 言われて、チアリーディング部の面々は皆、押し黙ってしまう。思い当たるところがあるのだろう。

「そしてもう一つ。色気だ。健康的なお色気が、な……」
「コーチ、私たちは見世物じゃありません!」

 美散が、再び皐月に食ってかかる。

「へっ、小娘が……きいたふうな口を叩くんじゃねえ。一度見たら、忘れられないくらいのインパクト!! これがねえと勝てねぇんだよ! 全国レベルじゃあな!」

 全国レベルで実績を残した皐月の言葉の重みに、誰も反論することができない。

「色気を身につけるには、日常生活で、常に男の存在を身近に感じることだ。こういっちゃ悪いが、雫石の怪我は、男慣れしてないお前らに、男って生き物を理解させる丁度良い機会だったのさ」

 マネージャーや女子寮の管理人として、男性が常に身近にいることで、自らの女を意識し、より色気や華を意識した演技が自然にできる、そう皐月は皆を諭す。

「で、昨日考えたんだがな、度胸と色気が一発でつく方法がある」
「そ、それは、どんなのですか、コーチ?」

 蒔帆が皐月にかぶりつくように聞く。

「それはな??」

 皐月は慎のほうに歩み寄ると、その肩を抱く。

「大会までの一ヶ月間、毎日こいつのチンポをぱいずりすること!」

 言われた慎は頭が真っ白になる。女子寮の管理人どころの反対ではないはずだ。なのに、皆、反応に乏しい。
 ちえりがおずおずと手を上げて質問する。

「あ、あのっ、コーチ、ぱいずりって……なんですか?」

 慎は全身から力が抜けそうになってしまう。他のメンバーはぱいずりのことを知らないようだ。

「なんだよお前ら……ぱいずりも知らねぇのか」

 皐月はチア部のメンバーに向かって自身のむっちりと肉づきの良い胸乳を強調するように前に突きだし、両手で下から持ちあげて見せる。

「ぱいずりってのは、こうやって、おっぱいを寄せて上げてよ……」

 ちえりはなにを説明されているのかピンとこないまま説明に聞き入る。

「ふんふん、寄せて上げて……」
「乳の谷間に男のチンポを挟みこんでだな……」

 真琴も、自分の乳房を持ちあげながら、うなずく。

「はい、挟みこんで……」

 皐月は仕上げにとばかり、卑猥な手つきで、爆乳を揉みしだきつつ、上下させる。

「そんでこんな風に、ズリズリ扱いて、どっぴゅんどっぴゅんイかせてやることだよ」
「はぁはぁ、どっぴゅん、どっぴゅん……と」

 夕菜は少し顔を赤らめつつ、感心したように復唱する。

「なぁんだ、そんなこと……って」

 美散はそこまで言って、凍りつく。

「えええええええぇぇ~~~~~~~っ!?」

 女子寮の前に、チアリーディング部全員の絶叫が響き渡るのだった。
 そこからの、チア部女子からの批難と戸惑いの嵐が凄まじかった。
 おっぱいを男子の前に晒すだけでも大変なことなのに、それでチンポをぱいずりしろというのだから、当然のことといえた。
 皐月は微塵も動じる様子を見せず、涼しい顔をしてみせる。

「いい機会だから、コーチとして模範演技を見せてやるよ」

 言いつつ、彼女はスーツのボタンを一つ一つ外していく。

「??ぱいずりのな」

 皐月は両手でブラウスの前を大きくはだけると、押しこめられていた爆乳が揺れとともに解放される。
 服の下に閉じこめられていた乳塊は驚くほど生白く、同時に量感の凄まじさで慎を圧倒する。真っ白な柔肌の張りだしとは対照的に乳暈は浅黒く、乳頭はサクランボの果実のようにぽってりと膨らみ、淫らな大人の乳房であることを主張していた。
 目の前に突きだされた成熟した女の生乳房を前にして、慎のブツは見事に反応。しっかり、がっちりとテントを張ってしまう。

「モルモットの準備もいいようだぜ?」

 皐月はにんまりと淫らな笑みを浮かべ、慎にもたれかかる。
 なにがなんだかわからないままの慎。

「松嶋、早瀬。しばらくこいつの手足押さえとけ」

 指示された夕菜と蒔帆は慎の手足を押さえこむ。

「ちょ、ちょっと……」

 抗議の声をあげる間もなくズボンが引き摺り下ろされ、チア部全員の前で勃起ペニスを露出させられる。

「恥ずかしいですから、やめてください……ううう」

 さすがに慎は居たたまれなくなって、顔を真っ赤にして逃れようともがく。

「恥ずかしがりながら、もうチンポびんびんにおっ立ててんじゃねーか。意外と見られてコーフンするタイプなんじゃないか?」
「うっ、うっ……」

 今にも泣きそうな顔の慎。そんな彼の、いや彼のペニスの様子を顔を真っ赤にしたちえりがじっと見ていた。

「まず、お前らにもついてる、女の武器??おっぱいの使い方からだ」

 皐月は言うなり、慎のブツを自分の重量感溢れる双乳で優しく挟みこむ。

「うううッ……」
「ふふふ、どんな感じだ、モルモット。気持ちよければ、我慢しないで声出していいんだぜ……?」

 皐月の上体がゆっくりと前後に動き、慎の屹立を扱きあげていく。真っ白な乳球に挟まれた雁首の先が覗き、再び乳塊に飲まれていく。









「うう、ぅおおおっ……!」

 慎は声にならない声を出してしまう。

「はじめは、ゆっくり、ゆっくり……チンポの竿を扱いてやるんだ……」

 すべらかな豊乳の感触が剛直を甘く刺激する。慎の刀身は大きさと硬さを増していく。

「ふふふっ、そんな気持ちよさそうな顔するなよ……アタシまで、感じてきちゃうだろ」

 皐月は紡錘形の熟れた乳袋にいきりを挟みつつ、艶っぽく微笑む。その大人の色気だけで、慎は射精してしまいそうだった。同時に乳肌が剛直に吸いついて、甘く擦りあげてくる。送りこまれる快楽に慎は夢中になってしまう。

「そ……そんなこと、言われましても……」
「ほら……あんっ、感じすぎて……乳首、こりこりになっちゃったぞ……わかるか?」

 皐月は硬く尖った乳首で、雁首の裏を撫であげてくる。ほど良い硬さの乳頭が敏感な箇所を直撃し、射精へと一気に持っていこうとする。

「くっ、ふおおぉっ……!!」
「あふぅ……チンポは、ここが特に感じるんだ……強弱をつけて、責めてやれ……」
「あひいぃっ、そ、そんな……!」

 ぎりぎりまでペニスを責めたてられ身もだえする慎を眺めながら、皐月はチア部員らに指導していく。

「みんな見えるか……? チンポの先っちょから、透明な液が出てきたろう?」

 じっと慎のペニスから目を離さず、ちえりは「は……はい」とだけ返事する。

「不思議……なんですか、これ……?」

 真琴も興味津々で質問する。

「カウパーだよ、男は感じてくると、濡れちまうのさ……女と同じように、な……」

 美散は汚らわしい、といいつつも、頬を朱に染めたまま、じっと視線を注ぎつづける。

「このカウパーと、アタシのよだれで……あ……んっ……」

 淫らに大きく開いた皐月の口から、慎の屹立に透明な唾液が滴り落ちる。

「あ……ああっ、あったかい……」
「ふふふっ、こうやって滑りをよくして……いよいよ本番だぜぇ……」

 皐月は自身の唾を潤滑油がわりにして、さらに激しいぱいずりで慎を追いこむ。

「あっ、んふっ、んんっ……」

 乱れた皐月の顔と、切っ先にかかる熱い吐息に、慎はますます昂ぶってしまう。

「うおぉぉっ、だ、ダメですコーチッ、そんな……」
「ここはダメだとは言ってない、はふぅ、みたいだけどねえ。いいか、みんな……ぱいずりってのは、ただおっぱいを押しつけりゃいいってもんじゃねぇ。んっ、くふっ、こうやって……搾り取るように……」

 脂肪の巨塊を慎の雄根に絡みつかせるように押しつけて、根元から先端へ精液を搾りだすように動かす。

「あひいぃっ、た……たまらんっ……!」
「んっ、ふふふふふ……気持ちいいか? カウパーがどんどん、溢れてきてるぜ……」

 慎の先走り液と皐月の汗、唾液が絡まって、猥雑な音をあたりに響かせる。

「凄い……エロすぎる……」

 いつもクールなはずの蒔帆でさえ、皐月の淫らすぎるぱいずりに見入っていた。

「ここからさらに、高等テクニックだぜ……んっ、ちゅっ……ちゅばッ」
「くふぅんっ……!?」

 皐月の唇がペニスの先にそっと触れる。慎は思わず声を出してしまう。

「ぁうぅぅぅぅ……コーチの口の中に……」

 慎のいきりが皐月の口腔に飲みこまれてしまう。そのまま、おいしそうに慎のブツを舌の上で転がす皐月に、チア部一同、固唾を呑んで見つめる。

「な、舐めるんですか……男の人の、モノを……はぁあぁ、お口の中いっぱいに頬張ってらっしゃいますね……」

 夕菜は熱に浮かされ、呆けた表情のまま皐月のフェラチオを見守る。他のメンバーも同様にかすかな感嘆を漏らしつつ、目の前の淫靡な饗宴にただ目を奪われていた。

「んっ、くぷっ……ちゅぶっ、んふふふ、キミの大きなチンポ、おマンコに挿れたら気持ちよさそうだけど……今度にしておくか」
「そ、そんな……ああぁっ……!!」

 隆起した巨根を弾力溢れる柔乳で扱かれ、飛びだした雁首の先を皐月の舌先で丁寧に舐めしゃぶられる。
 ちゅばちゅばという淫猥な粘音を立てつつ、ひたむきにペニスに奉仕する皐月。普段は厳しい鬼コーチの皐月のあまりに奔放な乱れぶりに、慎の気持ちの昂ぶりも最高潮に達する。

「このチンポの先っちょの穴を舌先でほじってやるんだ……こんな風に……」

 快楽の電流がペニスの先から背すじを貫き、脳髄に突き刺さる。

「同時に、おっぱいで休まずにチンポを扱くッ……じゅるるっ……このコンビネーションを、忘れんじゃねーぞ……って……」

 皐月のフェラぱいずりのあまりの淫蕩さに、チア部の面々は熱に浮かされたようになっていた。頬を赤く染め、ひたむきに二人のプレイを見つめていた。
 皐月は「処女にはちっと刺激が強すぎたか?」と独りごちる。

「目はそらすな。おめーらもやるんだからな……あふっ、じゅるるっ……」
「あふううっ……!」

 皐月の乳袋がさらに根元からペニスをプレスし、その口腔はぢゅぷぢゅぷと音を立てて、慎の精液をバキュームする。

「じゅぷっ、じゅぷっ、ちゅばっ、じゅるるっ、んぐっ……あふっ、んんっ、どんどん、硬く、熱くなって……じゅるるっ、ちゅぶっ、あふっ……」
「あぁ……チンポすごい……すごいの……じゅるっ、ちゅぶぶっ、ぐぷぷっ……」

 皐月はいつの間にかチア部員への指導のことも忘れて、慎のペニスに夢中になっていた。あの皐月が自分のチンポに興奮している、そう思うと、さらに慎は興奮する。高まった射精欲求をそのまま皐月にぶつけたくなってしまう。

「ああっ……コ、コーチ……俺、もうっ……出すよ、出しますよッ!!」
「ちゅぶっ、い、いいぞキミ……このまま、出しちゃっても……熱いザーメンをアタシにかけてくれッ!」
「はいッ、鷹山コーチの、その、きれいな顔……俺のザーメンで、どろどろに汚してあげますからッ!」
「それは楽しみだよッ、ぎゅぷっ、ちゅぶっ、じゅっぽ、じゅっぽじゅっぽ……」

 皐月のさらなるバキュームフェラ攻勢に耐え切れず、慎は一気に射精寸前まで持っていかれる。

「じゅぽっ、我慢しないれッ……思いっきり……だしなッ……ぢゅぽ、ぢゅぽッ、ぢゅぽぢゅぽぢゅぽッ!!」
「も、もうダメ……ダメだっ、コーチ……!」

 ダメという慎のいきりにとどめを刺すように、皐月はぢゆるるるるッと思いきり音を立てて雁首を吸いたてる。口腔の生温かな感触がペニスを直撃し、膨大な量の愉悦が流しこまれる。

「あひぃぃっ……! いくッ……いぐううぅぅっ……!!」

 慎はそれをきっかけに、一気に欲望を皐月の口腔めがけて解き放つ。とめどなく溢れるザーメンをさすがの皐月も受けとめきれず、唇の端からこぼしてしまう。

「んぐっ、じゅぶぶっ……こんな……あぶぅ、熱くて……いっふぁい……飲みきれない……すごいのぉ……ぁふぅぅ……こほ。こほッ」

 皐月が精液のあまりの量にむせて、ペニスを口から離してしまう。ビクビクと震えながら慎の屹立は精を撒き散らし、皐月の端正な顔を白く汚していく。

「あっ……あふぅぅっ、ぉほぉぉーーーーッ!!」

 乳白色のどろどろした粘液が皐月の額に、鼻頭に、頬にかかる。顔面全体をザーメンでコーティングされつつ、皐月も興奮のあまり達してしまっているようだった。

「ぁおぉぉッ……うう、顔射されてイってしまったよ……キミのザーメン……熱くてどろどろで……すごい匂い……くふぅん……」
「す……すみません……」
「バカ……謝らなくても、いいんだよ……くふっ、おいし……ちゅぶっ……れるる……」

 皐月はかかった白濁液を手で掬いとると、口に運んで音を立てて啜る。

「くふっ……さて、最後は、後始末も忘れないように、な……」
「え……後始末って……」

 言うなり皐月はペニスに絡んだ精液を丹念に舐めて、取り除いていく。いわゆるお掃除フェラというヤツだ。

「あん……むっ……ちゅぶっ……ちゅばちゅばっ、れろれろろッ……」

 皐月の愛情のこもった丁寧な舌遣いに、慎はまた勃起してしまう。

「あひっ、そ、そんな、ああっ……!!」

 自然に感じやすいツボを押さえた、淫蕩な皐月のフェラに、再び射精欲求が鎌首をもたげてくる。
 慎のペニスが再びエレクトしていることを知っているのか、皐月はじらすようにねっとり、時に激しくと、緩急をつけて再び彼の傑物を責めたてる。

「じゅるるるっ、ちゅぶっ……こうひて……尿道に残ってるザーメンも全部……ちゅぶっ……」
「あっ、あっ、あっ……ご、ごめんなさいぃぃ~~~っ……!!」
「なにが、ごめんなさい、なんだ、えッ」

 皐月はわかっていて意地悪そうに聞く。そうして直後に、反りかえった雁首を一気に刺激して、彼の白濁ミルクを搾りだしてしまう。

「だから、ぁひぃいぃぃ、射精しちゃうから、ごめんなさい、ううううッ!!」

 うめきとともに慎は皐月の喉奥に精液を再び放つ。

「んむぅうぅぅ、んふぅ、ぁふぅ……もっと、いっぱひ、出しなッ、ほらッ」

 射精する屹立の鈴口を舌先で刺激して、さらなる放精を促す。そうして、流しこまれたミルクセーキを飲み干してしまうのだった。









「はふぅぅ、ごちそうさまだな。んぐっ、じゅるるっ……後始末の刺激で、また射精しちゃうなんて……さすがに若いな……」
「い、いやぁ……あははは……」

 精液を見事にごっくんされてしまって、慎はただ照れ笑いするしかなかった。怖い鬼コーチの皐月に不思議と親近感が湧いてくる。
 周囲で二人の淫らなプレイを見守っていたチア部のメンバーは皆、羞恥に顔を赤くして、黙りこんでいた。

「ざっと、こんなもんだな」

 皐月は満足そうにげっぷすると、服を着て、手短に身支度を整える。

「今見せたこと、絶対に忘れんじゃねーぞ。そして必ず、実行するように! おめーらが大会で上を狙うためには、絶対に必要なことだからな……そんじゃ、今日は解散っ!!」

 そう言い置くと、目の前で起きたことのあまりのショックに思考停止しているチア部一同、そして慎を残して、皐月は先に寮へと帰ってしまうのだった。







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