流され妻の不貞な告白
2020年3月26日
オトナ文庫
著:雑賀匡
画:ロッコ
妻の深雪と出会ったのは三年前のことだ。
俺の勤めている会社に、新卒として彼女が入社してきたのだ。
可愛い娘が入ってきた──という話は小耳に挟んでいたが、当時の俺はそれほど関心を持たなかったし、気にすることもなかった。
主任になったばかりで、あまり余裕がなかったからだ。
だが、彼女は同じ部署へ配属されてきた。
それどころか、俺が教育係を務めることになったのである。
「よろしくお願いします。野島主任」
彼女は笑顔で言った。
そのときの柔らかな笑みを、俺はいまでも忘れることができない。
深雪は小柄だがスタイルがよくて、可愛らしい顔立ちをしていた。
ストレートの長い黒髪。少し丸顔気味の輪郭に、どんぐりのような大きい目と形のよい鼻梁。そして、ふっくらとした小さな唇が印象的だった。
育ちがよくて世間ズレしていなかったせいだろう。
どこかおっとりとした雰囲気を持つ彼女は、わずかに少女の面影を残していたが──。
着慣れていないスーツの下で揺れる大きな胸と、タイトスカートによって浮かび上がる腰のラインは、間違いなくひとりの女性として完成されたものだった。
「あ、ああ……よろしく」
俺は彼女を見つめながら曖昧に頷いた。
思わず見とれてしまい、まともに返事ができなかったからだ。
なにやら天啓のようなものを感じた。
大袈裟かもしれないが、彼女と初めて間近で接したとき、この女性は自分の人生において重要な人物である──と確信したのである。
もちろん、当時はただの妄想でしかなかった。
俺は学生時代から、一度も女性とつき合ったことがなかったのだ。
そんな男が「君に運命を感じた」などと言えるはずもない。
そう感じたと知られただけで、さぞかし気持ち悪がられてしまうだろう。
だから俺は、自分の想いを封印することにした。
絶対に知られてはイケナイと心に誓った。
深雪は少し優柔不断なところもあったが、基本的には優秀でなんでもできた。社内での評判もよく、取引先にも気に入られていた。
冴えない男である俺など、彼女の引き立て役のようなものだ。
上司や同僚からは何度もからかわれた。
身長が百八十センチを超える大柄な俺と、同年代のなかでは小柄な部類に入る深雪が並んで歩く姿は、まるでお姫様と護衛の兵士だ──と。
まあ、似たようなものだったと思う。
教育係といっても、俺はたいしたことはしていなかった。次々と仕事を覚え、社会人として成長していく彼女を、黙って横で眺めていただけなのだから。
いずれ深雪は俺のもとを離れて、ひとりでやっていくことになるだろう。
そうなれば、もう接点を持つこともなくなってしまう。
最初に感じた「運命」など、やはり勝手な妄想にすぎなかったのだ。
そう思っていたある日。
営業先からの帰り道で、いきなり彼女から秘めていた想いを告げられた。
「私、野島主任のことが好きです」
最初は冗談だと思った。
深雪が俺などを好きになるはずがない。
俺は背が高いだけで、特にイケメンというわけでもないのだ。
しかも優秀な彼女と違って、三流大学を出てなんとかいまの会社へ潜り込めたものの、何年もかかってようやく主任になったばかりというレベル。
もちろん出世とは無縁な立場にある。
そんな俺に、深雪のような女性が自ら告白などしてくるはずがないのだ。
だが、彼女は素朴な雰囲気を持った俺が好きだと言ってくれた。
さりげない気遣いができる人。
優しい人だと。
思いきったように──顔を真っ赤にしながら想いを告げる彼女を見て、やはり最初に感じた天啓は間違いではなかったのだと思い直した。
俺たちは本当に不器用だったと思う。
つき合いが始まった当初は、かなりぎこちない関係が続いた。
互いに異性と接する機会が少なかったせいもあり、ふたりでいても会話が続かず、最初のデートも失敗だらけだった。
けれど、要領の悪い俺を深雪は笑って許してくれた。
そんなあなたを好きになったのだ──と。
初めて身体を重ねたのは半年後。
一緒に飲みに行った際、潰れてしまった彼女を俺の部屋へ連れて来たときのことだった。
あとから聞いた話によると、これは深雪の策略だったらしい。いつまで経ってもなにもしない俺に焦れて、自ら誘いをかけてみたのだという。
押しの弱い彼女にしては、ずいぶんと思いきったことをしたものだ。
でも、そんな策略なら大歓迎だった。
情けない話だが、勇気がなくて誘うことができずにいたのだから。
女性経験のなかった俺は、もちろん緊張しまくりだった。
服を脱がすのに手間取ったり、挿入前に深雪の腹へ射精してしまったり──と情けない姿を晒しながらも、最終的にはなんとか結ばれることができた。
彼女も初めてだった。
事後、俺は深雪を抱きしめながら思った。
絶対に手放したくない。こんな素晴らしい女性が俺のことを好きになってくれたのだ。もう二度とこんなチャンスは巡ってこないだろう。
そう思ったから──初体験の二日後にプロポーズをした。
巷で言われるように、恋愛と結婚は別だと言われることも覚悟したけれど、彼女は快くふたつ返事で承諾してくれた。
俺にとって人生で一番幸せだった瞬間だ。
それから一年。
平凡だが幸せな毎日が続いている。
結婚後、深雪は周囲に惜しまれつつも会社を辞めたが、これは専業主婦として自分たちの新しい家庭を守りたいという彼女たっての希望だった。
いまは二馬力があたりまえのご時世である。
かなり大変だろうとは思ったが、経済的なことなら俺が頑張れば済む話だ。
幸いなことに、結婚前後から任される仕事の量も増えてきた。
だったら、少なくとも新婚の間くらいは、ふたりの時間を愉しもうという思惑もあって承諾したのだが──結果的にはよかったと言えるだろう。
「おかえりなさい、明哉さん」
家に帰るといつも深雪が迎えてくれる。
独身時代にはなかった新鮮さで、とても嬉しかった。
仕事の疲れを癒やしてくれる彼女の笑顔は、俺に幸せを実感させてくれたのだ。
まだ会社時代の癖が抜けないのか、彼女は妻となっても俺に対して敬語のままだったが、それすらも面白く、愛おしかった。
そろそろ子供が欲しい。
深雪の子供ならきっと可愛いだろう。家の中も賑やかになる。
本気でそんなことを考え始めていたとき、取引先の都合で残業がなくなり、予定よりも早く帰宅できることになった。
いい機会なので、将来の話をしてみよう。
俺はそんな想いを胸に、深雪の好きなケーキを買って帰路を急いだ。
彼女の驚く顔が見たかった。
喜ぶ顔が見たかった。
ただ、それだけだったのに──。
俺を待っていたのは、それまでの幸せな日々をすべて覆してしまう事実だった。
彼女は浮気をしていたのだ。
@
「あ、明哉さん……」
寝室のドアが開いたのは、ちょうど作業を終えたときのことだ。
振り返るとバスタオルに身を包んだ深雪の姿があった。彼女は俺がしていることを見て、くしゃりと表情を歪めてみせる。
「全身をしっかりと洗ってきたか?」
「は、はい」
「よし、だったら始めるとするか」
俺はおもむろに彼女へ近寄ると、その身体からバスタオルを剥ぎ取った。
「キャッ!?」
「腕を重ねて前に出せ」
「お願い……お願いですから、やめてください」
悲痛な声が寝室に響く。
だが、俺は懇願する妻の言葉を無視して、彼女の手をロープで固定していった。
古雑誌を処分するために購入した細いものだったが、何重にも巻けば動きを封じるくらいのことはできる。逃げ出せるような状況ではないので、拘束する必要もなかったのだが、これは覚悟を見せつけるために必要だった。
「明哉さん、こんなことは……」
「黙れ」
「……あっ!?」
床に倒れたものを気にする深雪を、ベッドの上へと突き飛ばす。
両手が使えず、顔から倒れた彼女の身体がスプリングによって軽く弾んだ。
俺は自らもベッドへ上がると、倒れた深雪の両手を頭の上へ上げさせるかたちで、ロープの端をヘッドボードへ固定していった。
彼女はその様子を恐怖に引きつった表情で見つめている。
「な、なにを……するつもりなんですか?」
「決まっているだろう。折檻だよ」
妻が不貞を働いたのだ。
夫である俺には大義名分がある。
信じていた相手に裏切られた怒りを表現する権利がある。
「せ、折檻……」
「俺が怒っているのは分かっているよな?」
「……はい」
「なにをされても、文句が言えない立場だっていうことも分かってるか?」
「わ、分かっています。でも……」
「分かっているなら黙ってろっ!」
込み上げてくる怒りに任せ、剥き出しになっている深雪の乳房を思いきり叩いた。
「……キャッ!?」
彼女は悲鳴を上げて身体を仰け反らせる。
同時に、ボリュームのある胸が弾むように揺れた。
ベッドサイドにあるスタンドの灯りで浮かび上がる妻の裸体は、こんな状況であるにも拘わらず、とても色っぽく感じられた。
──くそっ!
これまで宝物のように扱っていた身体。
白い肌にひとつの傷もつけたくなくて、大事に──優しく触れてきた。
だが、いまはもう違う。
目の前に横たわる美しい身体は、すでに穢れてしまっている。夫である俺を裏切って、他の男の性器を受け入れた醜い肉塊にすぎないのだ。
悔しくて目を背けると、ベッドサイドには深雪が脱ぎ散らした服が散乱していた。
その中にはセクシーな下着も混じっている。
紫色をしたレース仕立てのブラジャーと、布面積の極端に少ないショーツ。傍に落ちているのは、シャワーを浴びる前に脱いだガーターベルトとストッキングだ。
いずれにせよ、俺には見せたことのない──とても官能的な下着だった。
「ずいぶんと派手な下着だな。こんなもの持ってたのか」
「あ……こ、これは……」
「浮気専用のランジェリーってわけか。くくっ、俺もナメられたものだな」
深雪はこんな色っぽい下着を着けて、他の男と会っていたのだ。
俺がいない間に。
幸せな想い出の詰まった自宅で。
「違います、この下着は……」
「うるせぇ!」
抑えようのない怒りが再燃し、もう一度深雪の乳房を叩いた。
ふくよかな胸が弾むように揺れる。
「痛っ! や、やめて……ひゃあっ!?」
出会って以来、俺がここまでの怒りを見せたのは初めてのことだ。
それまで大人しい印象しか持っていなかった夫が、眉をつり上げて乳房を打擲してくるのだから、いまさらのように恐怖が込み上げてきたのだろう。
「やめてと言える立場かよっ!」
「ひっ……あ、んうっ!」
激情に任せて乳房を叩き続けていると、深雪は打擲から逃れようと身体を必死に回転させて俯せとなり、両手の拘束を解こうともがく。
だが、そんなことを許すはずもない。
俺は彼女の足首を掴んで引き寄せると、隠れてしまった乳房の代わりに、形のよい尻へ向けて手のひらを叩きつけていった。
「ひうっ!?」
乾いた音が鳴り、深雪はビクッと全身を震わせる。
手加減を一切しなかったので、かなり痛かったのだろう。雪のように白い尻には、赤く手の痕がくっきりと残った。
そこへ向けて、俺は何度も手のひらを振り下ろしていく。
「お願いですっ……やめてっ、やめてくださいっ!」
「だったら抵抗するなっ! 大人しく俺の言うことを聞くんだ!」
「は、はい……ごめんなさい、ごめんなさい」
彼女は声を震わせながら言った。
全身を縮こまらせ、シーツに押しつけた頭で何度も頷いてみせる。
「じゃあ、まずはすべてを話せ」
「は、話す……って」
「決まっているだろう。どうして浮気をしたのか、理由を教えろと言ってるんだ。なんでこんなことになってしまったのか……包み隠さず打ち明けろ」
「そ、それは──」
「待て」
口を開きかけた彼女を制し、クローゼットの中からビデオカメラを取り出した。
どうせ告白させるなら、一部始終を記録しておこうと考えたからだ。
まだ離婚について考えるほど頭はまわっていなかったし、脅迫されての自白が役に立つとも思えないが、とにかく証拠を残そうとしたのである。
ベッドへ向けたカメラを三脚で固定し、録画ボタンを押してから続きを促す。
「いいぞ、じゃあ教えてもらおうか。俺を裏切った理由を」
「裏切ったなんて……私はいまでも明哉さんのことを──」
「ふざけるなっ!」
これが裏切りでなければなんだというのだ。
「おまえは俺以外の男に、だらしなく股を広げて見せたんだろう!」
深雪の尻肉を両手で掴んで、力任せに左右へと開く。
きれいな色をしたアヌスと──陰裂が丸見えの状態になった。
「ここに、他の男のチンポを受け入れたんだろうがっ!」
「ああ……っ、いやぁっ!」
膣口に指を突き入れると、深雪は悲鳴を上げて大きく尻を跳ねさせる。
なんとか身体を捩って逃げようとするが、無視して根元まで指を沈めていった。
膣内はドロドロの状態だった。
つい先刻まで男根を突き入れられ──掻きまわされていたせいだろうか。膣肉はしっかりと解れて充血しており、快楽の続きを求めてうねり続けている。
潜り込ませた指にねっとりと絡みついてくるのだ。
それがとても悲しかった。
とても悔しかった。
俺だけの大切な場所を踏みにじられた気分だった。
「くそっ、くそっ、くそっ!」
「だめ……あ、明哉さん……そんなに強く……んぁああっ!」
妻は背中を仰け反らせて苦痛を訴えてくる。
だが、俺は指の動きを止めなかった。乱暴に前後させて、淫らに開いている花弁を容赦なく陵辱していった。
もちろん、快楽など与えてやらない。
普段の優しく愛おしむような愛撫とはまるで違う方法で──ただ苦痛を与えるためだけに激しく膣内を擦り続けていった。
「ひっ、やめて……言いますっ、ちゃんと話しますからっ」
「いいか、嘘を吐いたら許さないからな」
「はい……」
痛みか──それとも後悔からか。
深雪は瞳に涙を浮かべながら、ゆっくりと口を開いたのだった。
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(C)TASUKU SAIKA/ROKKO