リラクゼーション癒香
~魅惑のセラピストたちによる癒しのマッサージ&洗体、そして貴方にだけ特別なコトを~
2018年2月7日
オトナ文庫
著:黒瀧糸由
画:ぶぶづけ
原作:HERENCIA
金曜日の夜。残業帰りに、飲みに誘われたがとてもそんな気分にはなれず、断った。
「はああ…………」
今日、何度目かの大きな溜息。
俺は、長谷川和也。普通のサラリーマン。仕事をしていれば良いことも、悪いこともあるんだが、今日は……リーマン生活最悪の日だった。
まとまりかけていた大きな取引。なのに用意すべき書類を上司が忘れていて、契約が見送られてしまった。しかもそいつは自分のミスを認めず、失敗の責任を俺になすりつける始末。こんな日に酒を飲んだら悪酔いするに違いないし、愚痴しか出ない。飲み会の席を暗くしても悪いので断った。
「はあ……」
会社を出てから溜息をつき、俯いたまま歩き続けている。通い慣れた駅までの道。家に帰っても誰もいない。
「あれ? ここ、どこだ?」
顔を上げると見慣れない路地裏に自分がいることに気がついた。むしゃくしゃしながら歩いているうちに、紛れ込んでしまったらしい。その時、電車が止まる音が聞こえたので振り向くと、駅を見つけることができた。
飲食店も見当たらず、これまで来たことが無い。
わずかに灯る街灯。かなり寂しげな路地だが、そんな中に控えめに灯りをともしている立て看板があった。
「リラクゼーション癒香……? ゆうかって読むのか?」
よくある雑居ビルの入り口前に立つそれには、「マッサージ店」と「五階に店がある」こともあわせて書かれていた。
「マッサージかあ……」
日々の激務のせいもあるが、上司や部下とのやり取りで精神的に疲れているのもある。いつもはそんなことはないのに、今日は「マッサージ」という言葉に、心が惹かれた。
「……あら?」
ビルの入り口から女性が現れた。髪を肩口で揃えた、清潔な姿。わずかな灯りに照らされた顔は、かなりの美人。こちらを見てニッコリと微笑む表情はとても優しげで、それだけで癒やされてしまう。
「マッサージに興味、おありですか?」
「え? じゃあ……」
このキレイな女性が「癒香」という店の人らしい。ということは、この人がマッサージをしてくれるのか?
「今日から開店なのですが、いかがでしょうか?」
表情だけではなく、声まで優しく、心地良い。俺は反射的に返事をし、彼女に従って五階の店へと向かっていた。
「へえ……」
雑居ビルの中だというのに、ずいぶんキレイな作りだった。
エレベーターから降りるとすぐに受付用のカウンターがあり、その前には机と二人掛けくらいのソファーが置かれている。受付の奥はカーテンで仕切られて、先には何があるのか見えない。
「いらっしゃいませ。ご来店、ありがとうございます」
ソファーに座る俺に、先ほどの女性が深々と頭を下げた。さっきは気がつかなかったけど、お辞儀をされたことでかなり大きな胸だということが分かった。襟首から、谷間もちょっと見えてしまう。
「こちらが当店のコースになっています」
渡されたコース表には、三十分、六十分、九十分の基本となる時間と対応する料金が書かれていた。それ以外に、いくつかオプションがあるみたいだが、よく分からない。悩んでも仕方がないので「オススメ」と書かれていた、オイルを使用する六十分コースというのを指さし、女性に頼む。
「六十分コースですね。ありがとうございます」
また彼女は深々とお辞儀をする。
「お客様。申し訳ありませんが、料金は先にいただいておりまして。よろしいでしょうか?」
「あ、そうなんですか。じゃあ……」
財布を取り出し、料金を渡すと丁寧に受け取ってくれる。対応がすごく丁寧で、好感度が上がりっぱなしだ。
「ありがとうございます」
お金をレジに移してから女性は再び俺に近づき、右手をカウンター奥のカーテンの方向に向けた。
「では、こちらにどうぞ」
カーテンから中に入ると、いくつかのドアが並んでいた。小さな部屋単位で仕切られているようで、マッサージは中の一室で行われるらしい。
案内された部屋は、オレンジ色の照明に照らされ、なんだかいい香りがする。少し大きめのベッドが置かれていて、シーツ代わりのタオルが敷かれている。ベッドの脚がかなりしっかりしているので、これがマッサージ用のベッドなんだろう。
それ以外は目立った置物もなく、全体に質素な部屋だった。
「マッサージ前に、こちらにお着替えください」
「……え?」
彼女が手渡してくれたのは、いわゆる紙パンツ。
「これ……穿くんですか?」
「はい。その格好ではマッサージができませんので。くまなく解すためには、直接肌に触れた方が適切ですから」
「はあ、なるほど……」
つまり、紙パンツ一丁になれってことか……。
「着替えられる前にシャワーもご利用いただけますが、いかがです?」
「あ、いえ。それはいいです」
「分かりました。スーツにこちらのハンガーをご利用ください。それ以外のお召し物は、このカゴをご利用ください」
テキパキと指示を出されて、俺はいちいち頷きながら、手渡された紙パンツをベッドの上に置いた。
「何か、ご質問、ございますか?」
「えーと、あ……いえ。大丈夫です」
「承知いたしました。では」
また丁寧なお辞儀をすると、彼女は部屋から出て行った。
「さて……」
紙パンツを改めて広げてみると、それがかなり小さく、しかも「Tバック」タイプであることが分かった。こんなの穿いたら、尻が丸出しになるんだけど。
「これ穿くのか……」
素材は結構しっかりしているが、正直ためらってしまう。マッサージ店なら、服の上から揉みほぐすんじゃないか?
「……あ」
そこまで考えて、今さら気がついた。同僚だったか、部下だったかが言っていた。性的なサービスをする店っていうのは、こういう紙パンツを使うとかなんとか。では、ここも、そういう店なのか?
俺は、その手の風俗店というのはまったく経験がゼロ。童貞じゃないが、なんだか妙にドキドキしてしまう。
マッサージを受けたい気はするが、なんだか不安だ。といって、今さら帰るとも言えないし。それに料金は払ってしまった。
「いやいや、コレも経験だ!」
あれこれ考えても仕方が無い。俺はネクタイを掴むと頷き、一気に服を脱いで、布とは違う具合の紙パンツだけを装着する姿になった。やっぱり、どうにも落ち着かないが、俺はベッドに腰掛けて何度か深呼吸を続けた。
「お客様? お着替えは終わりましたでしょうか?」
数回目の深呼吸をした後、ドアの向こうから先ほどの女性の声が聞こえてきた。
「は、はい。大丈夫です」
返事をしながら俺は、また今さらな疑問に直面していた。マッサージを頼んだが、誰がしてくれるのかは聞いていない。こんな格好をして、もしかしたら屈強な筋肉ダルマの青年が入ってきたりして……。
「では、失礼します」
ドアが開いた瞬間、俺は息が止まりかけた。ついさっきした予想はまったく無意味な心配で、入ってきたのは先ほどの女性。
しかも彼女は、エッチなランジェリー姿になっていた。
確か、ベビードールとかいう下着だ。黒い布地はシースルーで、ピンク色のラインが入っている。残念ながらバストトップは見えないが、肩は剥き出しだし、大きな胸の谷間もしっかり見える。しかも下半身は開いているので、ショーツは丸見えだ……。そのショーツもまたエッチで、布地はデルタ地帯を最低限覆っているだけで、サイドは完全にヒモといってよかった。
「改めまして。マッサージを担当するユカです。よろしくお願いします」
優しく微笑みながら頭を下げる女性。店の入り口から相手をしてくれた、この人はユカさんていうのか。
「えっと……よろしくお願いします」
反射的に頭を下げると、嬉しそうにまたニッコリと微笑んだ。大人の雰囲気に満ちた、色気たっぷりの女性なのに、笑うとたまらなく可愛い……。
「では、ベッドにうつぶせになってください。顔は、こちらのマッサージ用の枕に。中央に穴が空いてますから呼吸できますよ」
「は、はい」
言われるままベッドにうつ伏せになり、マッサージ用の枕に顔を押しつけた。確かに、そこだけ空間があって、息苦しくはない。
「特に疲れている部分はありますか?」
「えーっと……肩とか、首ですね。デスクワークなもので」
「分かりました。では、そちらを重点的に」
そう応えると、ユカさんは大きなタオルケットを優しく身体にかけてくれた。部屋は適度に暖かく、身体がじんわりと緩んでくる。
ピッ、ピッと小さな電子音が鳴った。おそらく、時間を計るためのタイマーをセットしたのだろう。
「それでは始めさせていただきますね」
「お、お願いします」
ユカさんの手のひらが肩に、背中に、腰にと、タオル越しに押しつけられてくる。ほとんど撫でる程度の刺激だが、それはコリを確かめるための作業だったようだ。
ふくらはぎまで軽く揉むと、再びユカさんの手が俺の首筋に戻ってきた。そして今度は、手のひらではなく指先が首元に触れる。そして、ゆっくりと力が加わり……。
「ん…………」
女性なのにかなり強い力。体重を巧みに乗せて静かに指圧をしてくる。押された箇所から、鈍い痛みと気持ち良さが広がってくる。しばらく押されると指が離れ、少し位置をずらして、再び圧迫される。
「強さは、いかがですか?」
「ちょうど、いいです……」
「良かった。調整しますから、遠慮なくおっしゃってください」
「は、はい……」
丁寧にしっかりと指圧されていく首元や肩。一押しされるごとに、身体の奥で固まっていた悪いモノが解されて、流されていく気分だ。なんだか、会社であった嫌なことも、蕩けていく気分だ。
「お兄さん、すごくガッチリした身体されてるんですね。何かスポーツを?」
「い、いえ……何もしてませんよ。学生時代は鍛えたりしてましたけど……今は座りっぱなしで……。おかげで、太っちゃいまして……」
「そんなことありませんよ。すごく逞しい。……んっ。ここ、ちょっと強めにしますね」
肩甲骨の内側付近。指先が筋肉の中に潜り込み、奥に潜んでいたコリをしっかりと刺激される。今まで自覚していなかったコリを指圧されて、思わず声が出てしまう。
「う………」
「すみません。痛かったですか?」
「いえ、違います。ものすごく気持ち良くて……。ふう、マッサージって気持ちいいんですね」
「あら? マッサージを受けるの初めてですか?」
「はい。こんなにいいなら、もっと早くやってみれば良かった」
「それじゃ、お兄さんにガッカリされないよう頑張りますね」
「もう十分気持ちいいです」
「ふふ。ありがとうございます……んっ」
嬉しそうに言うと、ユカさんは再び腕に力を入れた。的確に凝ったポイントをグーッと押されて、本当に身体がリラックスしてくる。
「私も、嬉しいんですよ。お兄さんがいらしてくれて。このお店、今日が開店日なんです。でも、なかなかお客様が入らなくて。呼び込みでもしようかと思って、一階のビルの入り口に行ったら……」
「俺が、いたわけですね?」
「はい。あ、ここもすごく凝ってますよ。んっ……んっ……」
なんだか運命的な出会いを感じながら、肩甲骨周りを徹底的に解されていく気持ち良さに息が漏れ続ける。
「さっき呼び込みって言ってましたけど……もしかして、ユカさんが店のオーナーなんですか?」
「んっ……んっ。はい」
「すごいですね。店を出すなんて」
「いいえ。お店を出すのは意外に簡単なんです。難しいのは、んっ……。しっかりとマッサージをして、お客様に満足していただき、また来ていただけるようにすること」
頭の上から聞こえてくるユカさんの言葉を聞きながら、俺は少し混乱していた。
マッサージはかなり本格的で気持ちいい。マッサージに対してもユカさんはすごく真面目で、真剣で、俺の身体を本当に癒やそうとしている。ということは、本格的なマッサージ店なんだろう。
じゃあ、性的なサービスがあると思ったのは俺の勘違い? でも、ユカさんのエッチな格好は……?
「お兄さん? 効いてませんか? もうちょっと強くします?」
「い、いえ。気持ちいいから、なんかボーッとしちゃって」
「ふふ、良かった」
あれこれ考えるのはやめて、今はマッサージを受けよう。俺はそう考えて、身体の力を抜いた。
最初に伝えたとおり、首や肩を中心に指圧され、ずいぶん解れてきたと思われる頃、ユカさんの手が不意に離れた。
「かなり解れたようですので、オイルマッサージに入らせていただきますね」
「は、はあ」
普通のマッサージも初体験の俺だ。オイルマッサージがどういうものなのかも分からず、適当に返答をする。指圧はかなり効いていて、背中全体がポカポカと暖かい。
「では、失礼します」
身体にかかっていたタオルケットがふわりと剥がされ、外気に触れてわずかに涼しさを感じた。と、同時に、自分の身体がどうなっているかを思い出す。
あの紙パンツ一丁の姿。しかもうつ伏せでいるから、尻が……丸見えになってるんじゃないだろうか? 恥ずかしさに、なんだかまた身体が硬くなってしまいそうだ。
かなり動揺しまくっている横で「ニュチュッ」という粘り気のある水音がした。どうやらユカさんがオイルを手に塗っているらしい。
「オイルが馴染むまで冷たいかもしれませんが……」
前置きしてから、俺の背中にオイル塗れのユカさんの手が触れた。オイルがかなりたっぷりと付着しているとはいえ、直接触れられた。なんかやわらかくて、暖かい手なんだなあ……。
「冷たくありませんか?」
「いえ、平気です」
むしろユカさんの体温を感じて、暖かいくらいだ。
俺の返事を聞いたユカさんは、オイルを背中全体にゆっくりと広げていく。オイルというからもっとヌルヌルの感触を想像していたが、むしろ粘り気の強いボディーソープという感じだ。
ユカさんの手は、凝っていると言っていた肩甲骨を中心に撫でるようにオイルを塗り込んでくる。そして首に、肩に、腕に……と上半身がオイルでマッサージされていく。直接肌を触られることで伝わって来る熱や感触が、とても心地良い。
ある程度オイルを塗り終えると、今度は手のひらで筋肉を押し込みながら、肌を擦ってくる。オイルのおかげで滑るので、擦れて痛みを感じることもなく、暖かさがじんわりと奥に伝わっていく。
「いかがです、オイルマッサージは?」
「ええ……。指圧も良かったですが、オイルマッサージも……いいですね……」
「気に入っていただけたようで、良かったです」
指圧がピンポイントマッサージなら、オイルマッサージは身体全体の強張りを均等に解すような感じ。どちらも、かなり気持ちいい。
「あ……ふ……」
気持ち良さに眠気を感じ、小さくあくびが出た。
ユカさんの手は徐々に腰の辺りに移動し、そこにもオイルが塗りたくられ、手のひらで圧迫される。
腰を揉んでるってことは、あの紙パンツを穿いた状態を見られてるんだよな。尻がほぼ全開だったし、かなり恥ずかしい。だが、そのことにはまったく触れず、ユカさんは腰を重点的にオイルマッサージしてくれた。
腰の次には太ももの裏側、外側、内側。膝の裏を撫で、今度はふくらはぎを重点的に。最後は足の裏まで何度も何度も丁寧にマッサージしてくれた。今度は下半身もポカポカとしてきて、身体全体がふわふわと浮いている気分だ。
ユカさんの手が足裏から離れた。どうやらこれでオイルマッサージも終わりなのだろう。こんなにいいなら、もっと早くしてもらえば良かった。
初めてのマッサージに感動していると、再びあの「ニュチュ」という音が聞こえた。どうやら、また手にたっぷりとオイルを取って馴染ませているようだ。凝っていた部分をまた揉んでくれるんだろうか?
「ふふ……」
俺が何も言わずに待っていると、小さくユカさんの笑い声が漏れた。先ほどまでとはなんだか違う、湿り気を帯びた声で……。
「っ!?」
新しいマッサージの最初の瞬間、俺は身体を震わせた。
ユカさんの指先だけが背中に、そっと触れたのだ。いや、正確には触れるか触れないか程度のわずかな接触。爪がわずかに当たるのも感じる。そんなわずかな触り方で、肩の辺りが撫でられ、背中全体に触れられ、次は腰に、そして尻の辺りに降りてきた。
その部分は紙パンツの布地がまったくなく、剥き出しの臀部。その部分もわずかに指先が触れながら、円を描くように撫でられていく。くすぐったいような、微妙に気持ちが良いような……。
しばらく臀部の上で動いていた指先が、突然、太ももの内側に入り込んだ。
(っ……!)
声は抑えられたが、息が漏れてしまった。指先は、ここまでと同じように優しく、微妙な触れ方なのに、強い刺激を感じてしまう。
ここって、そんなに敏感だったのか……。
そんな感想を思い浮かべている間に、指先が股に向かって徐々に移動していた。それ以上先にすすめば……。
「ふ……ぅ」
ぬるぬるの指先が、するりと玉袋を本当に軽く撫でた。マッサージのせいで身体が敏感になっているらしく、本当にかすかな接触でも身体がピクッと反応してしまう。
「ふふっ……」
またユカさんの妖しい笑い声が漏れた。バカにしているのではないし、おもしろがっているのでもない。大人の女性だけができる、蠱惑的な笑い声……。うつ伏せになっているので直接表情は窺えないが、なんとなく分かってしまう。
指先がもう一度玉袋を撫で、太ももを優しく少し引っ掻いた。まるで、捕食動物がターゲットを見つけたときのような動き。
(いよいよなのかな……?)
このお店が、性的なサービスまで提供してくれるのかはまだ確信が持てない。でも、このユカさんの指の動きは、明らかに期待を持たせる。
ユカさんの手が一旦離れ、ニュチュ、ニュチュとオイルを手に取る音が聞こえた。先ほどとは違って、ひどくいやらしく聞こえてしまう。
しばらくして、再び両手が俺の足の間に潜り込み、優しく撫でたり、少し爪を立てたり。玉袋を撫で、さらに指が紙パンツの上から肉棒の根元の辺りをふわっと触れた。
「うっ……」
肉棒がビクビクと反応し、一気に硬さを増していく。ユカさんの指先は再び太ももの内側を優しく撫で、時々、思い出したかのように肉竿の一部を少しだけ触れる。
明らかに肉棒を触るのを避け、硬い部分が強く握られるようなことはない。焦らすような動きに俺の身体は芯から熱くなり、汗がうかんでいた。声が大きく溢れてしまいそうだが、なんとかガマンしている。
肉棒はさらに硬さを増して、うつ伏せになった身体の下でガチガチに尖っていた。そんな硬くなった部分に指先は触れるが、すぐに引っ込められ、さらなる刺激を与えてはくれない。
これが焦らしなのか、それとも俺が勘違いしているだけで性的なサービスはない店なのか? ユカさんに聞けば分かるかもしれないが、恥ずかしくてそれは無理だ。
サービスは、あるのか? ないのか? そんなことを考えている間に期待だけが大きく膨らみ、彼女の指先で与えられるかもしれない快感に強い期待を寄せていた。尋ねてみたいが、そんな勇気なくただ黙ってその時が来るのを願った。
微妙なタッチの刺激が繰り返された後、タオルが肌の表面を撫でた。どうやらオイルが拭われているらしい。それも終わると、皮膚の表面を軽く揺らす程度の強さでリズミカルに全身を叩いてく。
もしかして、これは……。
「はい。お疲れ様でした」
身体中から力が抜ける。ユカさんが放った言葉は、マッサージの終わりを意味していた。やはり、この店は普通のマッサージ店なんだ……。美しく素晴らしいプロポーションをしているユカさんだけに、余計残念だった。
「それでは、仰向けになってください」
予想外の指示を、ユカさんは出した。
「仰向け……ですか?」
「はい。仰向けでマッサージをしますので」
「わ、分かりました」
俺は促されるままベッドの上で、仰向けになった。途端に、恥ずかしさを感じる。
いま身に着けているのは、かなり穿き心地の悪い、露出度の高い紙パンツだ。うつ伏せという状況下でも硬く尖っていた肉棒が、仰向けになることで圧迫から解放され、何とかパンツには収まっているが、今にもパンツから飛び出しそうだ。
当然、ユカさんは気がつくだろう。だが、ユカさんは平然とオイルを手に取り、新たなマッサージの準備を始めている。
「失礼します」
「は、はい」
にこやかに微笑むユカさんと視線が合ってしまい、気恥ずかしくなって目を閉じた。頭の中では、いやらしいことを期待しまくっているので。
ユカさんの手は、最初に俺のお腹に触れた。ヌルヌルとした感触。オイルが腹全体に広げられ、指で擦りながら圧迫してくる。もしかして、この後、その手が股間に? という期待はすぐに裏切られ、マッサージは胸の方向に移った。
絶妙な力加減で身体の表面を丁寧に刺激していく。肩や腰を押したときのような強さはないが、それでも奥底に溜まった疲れが解されていく気分だ。
「いかがですか? 気持ち良いですか?」
「はい……すごく……」
俺はマッサージに気持ちを集中させながら、素直に答えた。
「そうですか。では、こっちはどうです?」
不意打ちだった。鎖骨あたりにあったユカさんの指が、いきなり俺の乳首に移動し撫で始めたのだ。
「くぅ!? あ……あ……」
刺激に耐えかね目を開くと、ユカさんは優しく笑みを浮かべて俺を見ていた。
「気持ち……良い、ですか?」
「は、はい……」
今までとは違う、吐息の混じった問いかけ。笑みはあくまでも優しいが、オイルに濡れた指先が、乳首をクリクリと撫でている。ゾクゾクと走る奇妙な感覚。声を出すまいとするが、息は漏れてしまう。
「それなら良かったです……」
俺の顔を見つめたまま、ユカさんの右手が俺の身体の上を滑り、紙パンツの上から硬く強ばった部分に指を這わせた。
「っ!?」
「ふふっ。お兄さんのココ……とっても硬い。すごく熱くなってますよ」
「うっ……くぅ……」
待ちに待っていた刺激。思わず身体がビクッと反応してしまう。変わらない優しい笑みを浮かべたまま、肉棒の表面を指が上に、下にと、ゆっくりと動いている。
うつ伏せの時と同じような優しい微妙な刺激。ソコへの刺激を求めていたが、もっと、もっと強くしてほしい。だが、そんなことは頼めない。
「お兄さん、ココ、触られるの……好きですか?」
「は、はい……」
「もっと触った方が良いですか?」
「はい……。で、できたら……」
思わず懇願してしまうと、ユカさんの口元が妖艶に歪んだ。
「ふふっ。分かりました……」
あくまでも優しく強張りに指を這わせたまま、甘い声で言った。
「パンツ、邪魔だから取っちゃいましょうね。腰を、上げてくださいますか?」
言われたまま腰を上げると、パンツの紐の部分を掴んで引っぱられ、するりと簡単に脱げてしまった。解放された肉棒が、ビクンッと跳ね腹に当たってペチッと音を立てる。
「とっても元気ですね。こんなに大きくなって……」
笑みを絶やさずユカさんは俺の顔と肉棒を交互に見つめた。見るだけで触ってくれない。なんてもどかしいんだろう……。
「ちょっとお待ちくださいね」
俺の気持ちを玩ぶようにユカさんは背中を向けて、オイルの入った入れ物を手に取る。そして、たっぷりとオイルを手のひらの上に乗せると、再びこちらを向いて、よく見えるようにオイルを手に馴染ませ始めた。
ニュチュ……ニュチュ……グチュ……。オイルとユカさんの肌が密着し、いやらしい音を奏でる。
「では、失礼しますね……」
ついに、ユカさんの指が剥き出しの肉棒に……絡みついた。
「っ……!」
いきなり動かしたりはせず、肉棒の形を確かめるようにぐにぐにと握り込むだけの動作。一番感じる部分にはまだ触れられていない。なのに、背すじがゾクゾクする。
「いま手の中で、ビクンって跳ねましたよ?」
優しく、でも艶っぽい声で、ユカさんは囁いた。そして、そっと手が動き出す。といっても、激しく扱くのではない。手に満たしたオイルを肉棒に馴染ませるように塗り込み、裏筋が緩慢な動きで丁寧に擦り上げられる。
緩やかな刺激なのに、思わず俺は息を漏らしてしまう。
そんな姿を優しげに見つめながら、根元から先端に向かってゆっくりと指が滑っていく。肉竿の中腹に、そして、さらに先へ。だが、最も敏感な部分に達しようとすると、指は再び下降を始める。竿の部分だけを上下に指の腹が這い、たっぷりとオイルを塗り込めてくる……。
「すごく熱くなってますよ……。火傷しちゃいそう……」
甘く囁きながら、今度は不意にキュッと握る。強弱をつけながら上下の動きも続けられ、俺の腰は勝手に動いていた。
「すごい。お兄さんのココ、また大きくなりましたよ。十分大きくて立派なのに、まだ大きくなるんですね。……素敵ですね」
「仕事、忙しくて。結構……くっ……た、溜まってて」
「そうなんですか? それじゃ……」
指がキュッとまた肉竿に強く絡んだ。ユカさんはじっとりと俺を見つめながら、口を開いた。
「しっかり出していってくださいね。……溜まっているの」
ニッコリと微笑むと同時に、肉棒を絶妙な強さで握るとそのまま静かに上下に動かし始めた。肌に浸透したオイルのおかげで滑りもよく、ユカさんの手のひらが肉竿の表面にピッタリと貼り付いたまま擦られる。
「くぅぅ……」
気持ち良すぎる……。上下運動は徐々に速度を増し、快感も一緒に高まっていく。
「手の中でいっぱい跳ねてますよ。とっても……元気」
「ゆ、ユカさんのマッサージが……気持ち、良すぎて……はぁ……くっ……」
「そう言っていただけると、とても嬉しいです」
ふっくらとした唇に艶っぽい笑みを浮かべるユカさん。ああ、やっぱりキレイな人だ。こんなキレイな人に……してもらってるんだ。
適度な速度で上下にオイルマッサージが繰り返される。
「くすっ……」
不意にユカさんの手の動きが止まった。肉棒を掴んだまま、俺の顔をいたずらっぽく見つめる。止めないで! と叫びたかったが、そんな恥ずかしいことは無理だ。こんな中途半端な状態で終わりなのかと不安になった。
「うふ……」
また小さな笑い声を漏らして、ユカさんは親指と人差し指で、丁度OKサインのような形を作って、肉棒の胴回りをぐるっと囲んだ。そのまま先端方向へ静かに動かし、カリのところで引っかかって止まった。
カリ首の周囲が親指と人差し指の腹側に包まれ、そこもまたオイルでヌルヌルになった。ユカさんは俺の反応を確かめながら、手首を動かして、カリ首の周囲を右に、左にと擦り始めた。スパナでボルトを回すように……。
「くっ!? うぅっ!!」
「ふふっ。すごい……」
足にまで力が入る、すさまじい快感。その様子を、ユカさんは笑みを浮かべながら見つめている。
「こうしたら、いかがですか?」
指がカリ首から離れ、親指と人差し指の腹で、亀頭をクリクリと撫で、擦り出した。敏感な部分を的確に責められて、また声が漏れてしまう。
「うっ……く……」
「こっちも良いみたいですね。……あら? 何かオイルと違う感触がしますね」
意地悪そうに言いながら、爪の先が軽く尿道口を突いた。トロトロと先走り汁が溢れる様子をユカさんは嬉しそうに見つめている。
「そうそう、こちらも良いとおっしゃってましたね」
オイルにまみれた左手が、俺の胸元に伸びた。そして、乳首を中指で優しく撫でまわし始める。股間と胸元から走る電流。思わず腰が浮いてしまい、ビクッと震えた。
「ふふ……」
初めてしてもらう股間と胸元のマッサージ。とても手でされているとは思えない深い快感。もっとこの快感を味わい続けたい。だが、度重なる刺激に、俺はもっと強い欲望を求めてしまう。
やわらかい刺激ではなく、射精に繋がる……強い快感を。
亀頭を優しく撫で、尖った乳首を軽く引っぱっているユカさんに、俺はなんとか声を出して訴えた。
「ユカさん……あ、あの……」
それだけで話が通じたらしい。軽く目を閉じて頷き、また口元に笑みを浮かべる。
「出したいんですよね……? そろそろ」
俺が強く頷くと、ユカさんはジッと俺の目を見つめて妖艶に微笑み、両手を離しオイルを追加で手に取った。そして、オイルでトロトロの右手で肉棒をしっかりと握り締めてくれる。
「出そうになったら言ってくださいね」
ついに求めていた最終段階。右手が上下にゆっくりと動くと、肉棒全体がオイルでぬるぬるになる。ユカさんの暖かい手のひらがキツすぎず、緩すぎずの微妙な力加減で亀頭と、カリ首を責め始めた。
左手は再び俺の乳首を責め、尖った部分を中心にクリクリと強く撫でられた。こんな場所が、射精に繋がるほどの快感を与えてくれるとは……。
「とっても大きい……。ビクビクしてますよ……」
これまでとは違う、射精を促すための動き。手首だけではなく、腕全体で大きく動くのでユカさんの身体も揺れた。セクシーなランジェリーに包まれた、大きな乳房がぷるぷると動くので目が放せない。
その視線に気付いたらしく、ユカさんは胸をもっとよく見せるようにしてくれた。
「ん……。硬い……。素敵ですよ……お兄さん」
亀頭とカリ首を徹底的に指でリズミカルに攻め、ゴシゴシと擦ってくる。強い圧迫ではなく、快感ポイントを的確に指で刺激し撫でてくる。時々、手首を使って、今まで当たっていなかった場所も刺激するので、快感がさらに増してくる。
「すごい……どんどん硬くなってきていますね……。擦る度に、ピクピク震えて……んっ、とってもすごい」
ユカさんの視線が肉棒に集中し、軽く口元が開いていた。まるで、物欲しげにも見えるような表情。そんな横顔はやはり美人で、しかも艶めいた色気がたっぷりと溢れている。
ああ、こんな美しい人に、扱いてもらえるなんて……。
そのことに興奮度がさらに増して、一気に限界がやってきた。
「ゆ、ユカさん……。そろそろ……」
「出そうなんですね?」
「は、はい……」
「ふふっ。分かりました」
ユカさんは左手を乳首から放し、近くにあったティッシュボックスから、ティッシュを数枚慣れた手付きで摘まみ取った。
「ガマンしないで、出してくださいね」
肉棒を擦る手の動きが高速になり、締め付けも少しだけ強くなった。先走り汁がドブドブと溢れ、オイルと混合されていく。尿道口の先端にはティッシュが待機し、受け入れ体勢ができていた。
「ここに、お兄さんのいっぱい出してくださいね」
「は……はいっ……。うっ! うっ……!」
甘くて優しい言葉に導かれ、俺は抵抗することなく絶頂した。
「うっ! うっ! くぅぅぅ!」
「あっ……」
今までにない強い快感に腰が跳ね上がり、同時に大量の精子をティッシュの中に噴出した。
「すごく熱い……」
手の中で暴れる肉棒をユカさんは慌てずに宥め、さらに上下に動かして擦り続ける。
「あ……あ……くぅぅ!」
射精が、止まらない! 普段なら、絶頂の最高の快感を得ても数秒後には消えてしまう。ところが、ユカさんの手にかかると、射精が、快感が次から次へと続くのだ。
白濁液の噴出は一度で終わらず、二回、三回と繰り返された。
「最後の一滴まで、出しちゃってくださいね」
敏感になった亀頭を手のひらで撫でまわし、カリ首を親指の腹でコリコリと引っ掻くように刺激する。イった直後なのに再び射精感が盛り上がり、また噴射……。
俺は、ユカさんの手の中で、何度も何度も最高の射精を続けた。
この続きは、2月15日発売のオトナ文庫『リラクゼーション癒香 ~魅惑のセラピストたちによる癒しのマッサージ&洗体、そして貴方にだけ特別なコトを~』でお楽しみください!!
(C)SHIYU KUROTAKI/HERENCIA
「はああ…………」
今日、何度目かの大きな溜息。
俺は、長谷川和也。普通のサラリーマン。仕事をしていれば良いことも、悪いこともあるんだが、今日は……リーマン生活最悪の日だった。
まとまりかけていた大きな取引。なのに用意すべき書類を上司が忘れていて、契約が見送られてしまった。しかもそいつは自分のミスを認めず、失敗の責任を俺になすりつける始末。こんな日に酒を飲んだら悪酔いするに違いないし、愚痴しか出ない。飲み会の席を暗くしても悪いので断った。
「はあ……」
会社を出てから溜息をつき、俯いたまま歩き続けている。通い慣れた駅までの道。家に帰っても誰もいない。
「あれ? ここ、どこだ?」
顔を上げると見慣れない路地裏に自分がいることに気がついた。むしゃくしゃしながら歩いているうちに、紛れ込んでしまったらしい。その時、電車が止まる音が聞こえたので振り向くと、駅を見つけることができた。
飲食店も見当たらず、これまで来たことが無い。
わずかに灯る街灯。かなり寂しげな路地だが、そんな中に控えめに灯りをともしている立て看板があった。
「リラクゼーション癒香……? ゆうかって読むのか?」
よくある雑居ビルの入り口前に立つそれには、「マッサージ店」と「五階に店がある」こともあわせて書かれていた。
「マッサージかあ……」
日々の激務のせいもあるが、上司や部下とのやり取りで精神的に疲れているのもある。いつもはそんなことはないのに、今日は「マッサージ」という言葉に、心が惹かれた。
「……あら?」
ビルの入り口から女性が現れた。髪を肩口で揃えた、清潔な姿。わずかな灯りに照らされた顔は、かなりの美人。こちらを見てニッコリと微笑む表情はとても優しげで、それだけで癒やされてしまう。
「マッサージに興味、おありですか?」
「え? じゃあ……」
このキレイな女性が「癒香」という店の人らしい。ということは、この人がマッサージをしてくれるのか?
「今日から開店なのですが、いかがでしょうか?」
表情だけではなく、声まで優しく、心地良い。俺は反射的に返事をし、彼女に従って五階の店へと向かっていた。
「へえ……」
雑居ビルの中だというのに、ずいぶんキレイな作りだった。
エレベーターから降りるとすぐに受付用のカウンターがあり、その前には机と二人掛けくらいのソファーが置かれている。受付の奥はカーテンで仕切られて、先には何があるのか見えない。
「いらっしゃいませ。ご来店、ありがとうございます」
ソファーに座る俺に、先ほどの女性が深々と頭を下げた。さっきは気がつかなかったけど、お辞儀をされたことでかなり大きな胸だということが分かった。襟首から、谷間もちょっと見えてしまう。
「こちらが当店のコースになっています」
渡されたコース表には、三十分、六十分、九十分の基本となる時間と対応する料金が書かれていた。それ以外に、いくつかオプションがあるみたいだが、よく分からない。悩んでも仕方がないので「オススメ」と書かれていた、オイルを使用する六十分コースというのを指さし、女性に頼む。
「六十分コースですね。ありがとうございます」
また彼女は深々とお辞儀をする。
「お客様。申し訳ありませんが、料金は先にいただいておりまして。よろしいでしょうか?」
「あ、そうなんですか。じゃあ……」
財布を取り出し、料金を渡すと丁寧に受け取ってくれる。対応がすごく丁寧で、好感度が上がりっぱなしだ。
「ありがとうございます」
お金をレジに移してから女性は再び俺に近づき、右手をカウンター奥のカーテンの方向に向けた。
「では、こちらにどうぞ」
カーテンから中に入ると、いくつかのドアが並んでいた。小さな部屋単位で仕切られているようで、マッサージは中の一室で行われるらしい。
案内された部屋は、オレンジ色の照明に照らされ、なんだかいい香りがする。少し大きめのベッドが置かれていて、シーツ代わりのタオルが敷かれている。ベッドの脚がかなりしっかりしているので、これがマッサージ用のベッドなんだろう。
それ以外は目立った置物もなく、全体に質素な部屋だった。
「マッサージ前に、こちらにお着替えください」
「……え?」
彼女が手渡してくれたのは、いわゆる紙パンツ。
「これ……穿くんですか?」
「はい。その格好ではマッサージができませんので。くまなく解すためには、直接肌に触れた方が適切ですから」
「はあ、なるほど……」
つまり、紙パンツ一丁になれってことか……。
「着替えられる前にシャワーもご利用いただけますが、いかがです?」
「あ、いえ。それはいいです」
「分かりました。スーツにこちらのハンガーをご利用ください。それ以外のお召し物は、このカゴをご利用ください」
テキパキと指示を出されて、俺はいちいち頷きながら、手渡された紙パンツをベッドの上に置いた。
「何か、ご質問、ございますか?」
「えーと、あ……いえ。大丈夫です」
「承知いたしました。では」
また丁寧なお辞儀をすると、彼女は部屋から出て行った。
「さて……」
紙パンツを改めて広げてみると、それがかなり小さく、しかも「Tバック」タイプであることが分かった。こんなの穿いたら、尻が丸出しになるんだけど。
「これ穿くのか……」
素材は結構しっかりしているが、正直ためらってしまう。マッサージ店なら、服の上から揉みほぐすんじゃないか?
「……あ」
そこまで考えて、今さら気がついた。同僚だったか、部下だったかが言っていた。性的なサービスをする店っていうのは、こういう紙パンツを使うとかなんとか。では、ここも、そういう店なのか?
俺は、その手の風俗店というのはまったく経験がゼロ。童貞じゃないが、なんだか妙にドキドキしてしまう。
マッサージを受けたい気はするが、なんだか不安だ。といって、今さら帰るとも言えないし。それに料金は払ってしまった。
「いやいや、コレも経験だ!」
あれこれ考えても仕方が無い。俺はネクタイを掴むと頷き、一気に服を脱いで、布とは違う具合の紙パンツだけを装着する姿になった。やっぱり、どうにも落ち着かないが、俺はベッドに腰掛けて何度か深呼吸を続けた。
「お客様? お着替えは終わりましたでしょうか?」
数回目の深呼吸をした後、ドアの向こうから先ほどの女性の声が聞こえてきた。
「は、はい。大丈夫です」
返事をしながら俺は、また今さらな疑問に直面していた。マッサージを頼んだが、誰がしてくれるのかは聞いていない。こんな格好をして、もしかしたら屈強な筋肉ダルマの青年が入ってきたりして……。
「では、失礼します」
ドアが開いた瞬間、俺は息が止まりかけた。ついさっきした予想はまったく無意味な心配で、入ってきたのは先ほどの女性。
しかも彼女は、エッチなランジェリー姿になっていた。
確か、ベビードールとかいう下着だ。黒い布地はシースルーで、ピンク色のラインが入っている。残念ながらバストトップは見えないが、肩は剥き出しだし、大きな胸の谷間もしっかり見える。しかも下半身は開いているので、ショーツは丸見えだ……。そのショーツもまたエッチで、布地はデルタ地帯を最低限覆っているだけで、サイドは完全にヒモといってよかった。
「改めまして。マッサージを担当するユカです。よろしくお願いします」
優しく微笑みながら頭を下げる女性。店の入り口から相手をしてくれた、この人はユカさんていうのか。
「えっと……よろしくお願いします」
反射的に頭を下げると、嬉しそうにまたニッコリと微笑んだ。大人の雰囲気に満ちた、色気たっぷりの女性なのに、笑うとたまらなく可愛い……。
「では、ベッドにうつぶせになってください。顔は、こちらのマッサージ用の枕に。中央に穴が空いてますから呼吸できますよ」
「は、はい」
言われるままベッドにうつ伏せになり、マッサージ用の枕に顔を押しつけた。確かに、そこだけ空間があって、息苦しくはない。
「特に疲れている部分はありますか?」
「えーっと……肩とか、首ですね。デスクワークなもので」
「分かりました。では、そちらを重点的に」
そう応えると、ユカさんは大きなタオルケットを優しく身体にかけてくれた。部屋は適度に暖かく、身体がじんわりと緩んでくる。
ピッ、ピッと小さな電子音が鳴った。おそらく、時間を計るためのタイマーをセットしたのだろう。
「それでは始めさせていただきますね」
「お、お願いします」
ユカさんの手のひらが肩に、背中に、腰にと、タオル越しに押しつけられてくる。ほとんど撫でる程度の刺激だが、それはコリを確かめるための作業だったようだ。
ふくらはぎまで軽く揉むと、再びユカさんの手が俺の首筋に戻ってきた。そして今度は、手のひらではなく指先が首元に触れる。そして、ゆっくりと力が加わり……。
「ん…………」
女性なのにかなり強い力。体重を巧みに乗せて静かに指圧をしてくる。押された箇所から、鈍い痛みと気持ち良さが広がってくる。しばらく押されると指が離れ、少し位置をずらして、再び圧迫される。
「強さは、いかがですか?」
「ちょうど、いいです……」
「良かった。調整しますから、遠慮なくおっしゃってください」
「は、はい……」
丁寧にしっかりと指圧されていく首元や肩。一押しされるごとに、身体の奥で固まっていた悪いモノが解されて、流されていく気分だ。なんだか、会社であった嫌なことも、蕩けていく気分だ。
「お兄さん、すごくガッチリした身体されてるんですね。何かスポーツを?」
「い、いえ……何もしてませんよ。学生時代は鍛えたりしてましたけど……今は座りっぱなしで……。おかげで、太っちゃいまして……」
「そんなことありませんよ。すごく逞しい。……んっ。ここ、ちょっと強めにしますね」
肩甲骨の内側付近。指先が筋肉の中に潜り込み、奥に潜んでいたコリをしっかりと刺激される。今まで自覚していなかったコリを指圧されて、思わず声が出てしまう。
「う………」
「すみません。痛かったですか?」
「いえ、違います。ものすごく気持ち良くて……。ふう、マッサージって気持ちいいんですね」
「あら? マッサージを受けるの初めてですか?」
「はい。こんなにいいなら、もっと早くやってみれば良かった」
「それじゃ、お兄さんにガッカリされないよう頑張りますね」
「もう十分気持ちいいです」
「ふふ。ありがとうございます……んっ」
嬉しそうに言うと、ユカさんは再び腕に力を入れた。的確に凝ったポイントをグーッと押されて、本当に身体がリラックスしてくる。
「私も、嬉しいんですよ。お兄さんがいらしてくれて。このお店、今日が開店日なんです。でも、なかなかお客様が入らなくて。呼び込みでもしようかと思って、一階のビルの入り口に行ったら……」
「俺が、いたわけですね?」
「はい。あ、ここもすごく凝ってますよ。んっ……んっ……」
なんだか運命的な出会いを感じながら、肩甲骨周りを徹底的に解されていく気持ち良さに息が漏れ続ける。
「さっき呼び込みって言ってましたけど……もしかして、ユカさんが店のオーナーなんですか?」
「んっ……んっ。はい」
「すごいですね。店を出すなんて」
「いいえ。お店を出すのは意外に簡単なんです。難しいのは、んっ……。しっかりとマッサージをして、お客様に満足していただき、また来ていただけるようにすること」
頭の上から聞こえてくるユカさんの言葉を聞きながら、俺は少し混乱していた。
マッサージはかなり本格的で気持ちいい。マッサージに対してもユカさんはすごく真面目で、真剣で、俺の身体を本当に癒やそうとしている。ということは、本格的なマッサージ店なんだろう。
じゃあ、性的なサービスがあると思ったのは俺の勘違い? でも、ユカさんのエッチな格好は……?
「お兄さん? 効いてませんか? もうちょっと強くします?」
「い、いえ。気持ちいいから、なんかボーッとしちゃって」
「ふふ、良かった」
あれこれ考えるのはやめて、今はマッサージを受けよう。俺はそう考えて、身体の力を抜いた。
最初に伝えたとおり、首や肩を中心に指圧され、ずいぶん解れてきたと思われる頃、ユカさんの手が不意に離れた。
「かなり解れたようですので、オイルマッサージに入らせていただきますね」
「は、はあ」
普通のマッサージも初体験の俺だ。オイルマッサージがどういうものなのかも分からず、適当に返答をする。指圧はかなり効いていて、背中全体がポカポカと暖かい。
「では、失礼します」
身体にかかっていたタオルケットがふわりと剥がされ、外気に触れてわずかに涼しさを感じた。と、同時に、自分の身体がどうなっているかを思い出す。
あの紙パンツ一丁の姿。しかもうつ伏せでいるから、尻が……丸見えになってるんじゃないだろうか? 恥ずかしさに、なんだかまた身体が硬くなってしまいそうだ。
かなり動揺しまくっている横で「ニュチュッ」という粘り気のある水音がした。どうやらユカさんがオイルを手に塗っているらしい。
「オイルが馴染むまで冷たいかもしれませんが……」
前置きしてから、俺の背中にオイル塗れのユカさんの手が触れた。オイルがかなりたっぷりと付着しているとはいえ、直接触れられた。なんかやわらかくて、暖かい手なんだなあ……。
「冷たくありませんか?」
「いえ、平気です」
むしろユカさんの体温を感じて、暖かいくらいだ。
俺の返事を聞いたユカさんは、オイルを背中全体にゆっくりと広げていく。オイルというからもっとヌルヌルの感触を想像していたが、むしろ粘り気の強いボディーソープという感じだ。
ユカさんの手は、凝っていると言っていた肩甲骨を中心に撫でるようにオイルを塗り込んでくる。そして首に、肩に、腕に……と上半身がオイルでマッサージされていく。直接肌を触られることで伝わって来る熱や感触が、とても心地良い。
ある程度オイルを塗り終えると、今度は手のひらで筋肉を押し込みながら、肌を擦ってくる。オイルのおかげで滑るので、擦れて痛みを感じることもなく、暖かさがじんわりと奥に伝わっていく。
「いかがです、オイルマッサージは?」
「ええ……。指圧も良かったですが、オイルマッサージも……いいですね……」
「気に入っていただけたようで、良かったです」
指圧がピンポイントマッサージなら、オイルマッサージは身体全体の強張りを均等に解すような感じ。どちらも、かなり気持ちいい。
「あ……ふ……」
気持ち良さに眠気を感じ、小さくあくびが出た。
ユカさんの手は徐々に腰の辺りに移動し、そこにもオイルが塗りたくられ、手のひらで圧迫される。
腰を揉んでるってことは、あの紙パンツを穿いた状態を見られてるんだよな。尻がほぼ全開だったし、かなり恥ずかしい。だが、そのことにはまったく触れず、ユカさんは腰を重点的にオイルマッサージしてくれた。
腰の次には太ももの裏側、外側、内側。膝の裏を撫で、今度はふくらはぎを重点的に。最後は足の裏まで何度も何度も丁寧にマッサージしてくれた。今度は下半身もポカポカとしてきて、身体全体がふわふわと浮いている気分だ。
ユカさんの手が足裏から離れた。どうやらこれでオイルマッサージも終わりなのだろう。こんなにいいなら、もっと早くしてもらえば良かった。
初めてのマッサージに感動していると、再びあの「ニュチュ」という音が聞こえた。どうやら、また手にたっぷりとオイルを取って馴染ませているようだ。凝っていた部分をまた揉んでくれるんだろうか?
「ふふ……」
俺が何も言わずに待っていると、小さくユカさんの笑い声が漏れた。先ほどまでとはなんだか違う、湿り気を帯びた声で……。
「っ!?」
新しいマッサージの最初の瞬間、俺は身体を震わせた。
ユカさんの指先だけが背中に、そっと触れたのだ。いや、正確には触れるか触れないか程度のわずかな接触。爪がわずかに当たるのも感じる。そんなわずかな触り方で、肩の辺りが撫でられ、背中全体に触れられ、次は腰に、そして尻の辺りに降りてきた。
その部分は紙パンツの布地がまったくなく、剥き出しの臀部。その部分もわずかに指先が触れながら、円を描くように撫でられていく。くすぐったいような、微妙に気持ちが良いような……。
しばらく臀部の上で動いていた指先が、突然、太ももの内側に入り込んだ。
(っ……!)
声は抑えられたが、息が漏れてしまった。指先は、ここまでと同じように優しく、微妙な触れ方なのに、強い刺激を感じてしまう。
ここって、そんなに敏感だったのか……。
そんな感想を思い浮かべている間に、指先が股に向かって徐々に移動していた。それ以上先にすすめば……。
「ふ……ぅ」
ぬるぬるの指先が、するりと玉袋を本当に軽く撫でた。マッサージのせいで身体が敏感になっているらしく、本当にかすかな接触でも身体がピクッと反応してしまう。
「ふふっ……」
またユカさんの妖しい笑い声が漏れた。バカにしているのではないし、おもしろがっているのでもない。大人の女性だけができる、蠱惑的な笑い声……。うつ伏せになっているので直接表情は窺えないが、なんとなく分かってしまう。
指先がもう一度玉袋を撫で、太ももを優しく少し引っ掻いた。まるで、捕食動物がターゲットを見つけたときのような動き。
(いよいよなのかな……?)
このお店が、性的なサービスまで提供してくれるのかはまだ確信が持てない。でも、このユカさんの指の動きは、明らかに期待を持たせる。
ユカさんの手が一旦離れ、ニュチュ、ニュチュとオイルを手に取る音が聞こえた。先ほどとは違って、ひどくいやらしく聞こえてしまう。
しばらくして、再び両手が俺の足の間に潜り込み、優しく撫でたり、少し爪を立てたり。玉袋を撫で、さらに指が紙パンツの上から肉棒の根元の辺りをふわっと触れた。
「うっ……」
肉棒がビクビクと反応し、一気に硬さを増していく。ユカさんの指先は再び太ももの内側を優しく撫で、時々、思い出したかのように肉竿の一部を少しだけ触れる。
明らかに肉棒を触るのを避け、硬い部分が強く握られるようなことはない。焦らすような動きに俺の身体は芯から熱くなり、汗がうかんでいた。声が大きく溢れてしまいそうだが、なんとかガマンしている。
肉棒はさらに硬さを増して、うつ伏せになった身体の下でガチガチに尖っていた。そんな硬くなった部分に指先は触れるが、すぐに引っ込められ、さらなる刺激を与えてはくれない。
これが焦らしなのか、それとも俺が勘違いしているだけで性的なサービスはない店なのか? ユカさんに聞けば分かるかもしれないが、恥ずかしくてそれは無理だ。
サービスは、あるのか? ないのか? そんなことを考えている間に期待だけが大きく膨らみ、彼女の指先で与えられるかもしれない快感に強い期待を寄せていた。尋ねてみたいが、そんな勇気なくただ黙ってその時が来るのを願った。
微妙なタッチの刺激が繰り返された後、タオルが肌の表面を撫でた。どうやらオイルが拭われているらしい。それも終わると、皮膚の表面を軽く揺らす程度の強さでリズミカルに全身を叩いてく。
もしかして、これは……。
「はい。お疲れ様でした」
身体中から力が抜ける。ユカさんが放った言葉は、マッサージの終わりを意味していた。やはり、この店は普通のマッサージ店なんだ……。美しく素晴らしいプロポーションをしているユカさんだけに、余計残念だった。
「それでは、仰向けになってください」
予想外の指示を、ユカさんは出した。
「仰向け……ですか?」
「はい。仰向けでマッサージをしますので」
「わ、分かりました」
俺は促されるままベッドの上で、仰向けになった。途端に、恥ずかしさを感じる。
いま身に着けているのは、かなり穿き心地の悪い、露出度の高い紙パンツだ。うつ伏せという状況下でも硬く尖っていた肉棒が、仰向けになることで圧迫から解放され、何とかパンツには収まっているが、今にもパンツから飛び出しそうだ。
当然、ユカさんは気がつくだろう。だが、ユカさんは平然とオイルを手に取り、新たなマッサージの準備を始めている。
「失礼します」
「は、はい」
にこやかに微笑むユカさんと視線が合ってしまい、気恥ずかしくなって目を閉じた。頭の中では、いやらしいことを期待しまくっているので。
ユカさんの手は、最初に俺のお腹に触れた。ヌルヌルとした感触。オイルが腹全体に広げられ、指で擦りながら圧迫してくる。もしかして、この後、その手が股間に? という期待はすぐに裏切られ、マッサージは胸の方向に移った。
絶妙な力加減で身体の表面を丁寧に刺激していく。肩や腰を押したときのような強さはないが、それでも奥底に溜まった疲れが解されていく気分だ。
「いかがですか? 気持ち良いですか?」
「はい……すごく……」
俺はマッサージに気持ちを集中させながら、素直に答えた。
「そうですか。では、こっちはどうです?」
不意打ちだった。鎖骨あたりにあったユカさんの指が、いきなり俺の乳首に移動し撫で始めたのだ。
「くぅ!? あ……あ……」
刺激に耐えかね目を開くと、ユカさんは優しく笑みを浮かべて俺を見ていた。
「気持ち……良い、ですか?」
「は、はい……」
今までとは違う、吐息の混じった問いかけ。笑みはあくまでも優しいが、オイルに濡れた指先が、乳首をクリクリと撫でている。ゾクゾクと走る奇妙な感覚。声を出すまいとするが、息は漏れてしまう。
「それなら良かったです……」
俺の顔を見つめたまま、ユカさんの右手が俺の身体の上を滑り、紙パンツの上から硬く強ばった部分に指を這わせた。
「っ!?」
「ふふっ。お兄さんのココ……とっても硬い。すごく熱くなってますよ」
「うっ……くぅ……」
待ちに待っていた刺激。思わず身体がビクッと反応してしまう。変わらない優しい笑みを浮かべたまま、肉棒の表面を指が上に、下にと、ゆっくりと動いている。
うつ伏せの時と同じような優しい微妙な刺激。ソコへの刺激を求めていたが、もっと、もっと強くしてほしい。だが、そんなことは頼めない。
「お兄さん、ココ、触られるの……好きですか?」
「は、はい……」
「もっと触った方が良いですか?」
「はい……。で、できたら……」
思わず懇願してしまうと、ユカさんの口元が妖艶に歪んだ。
「ふふっ。分かりました……」
あくまでも優しく強張りに指を這わせたまま、甘い声で言った。
「パンツ、邪魔だから取っちゃいましょうね。腰を、上げてくださいますか?」
言われたまま腰を上げると、パンツの紐の部分を掴んで引っぱられ、するりと簡単に脱げてしまった。解放された肉棒が、ビクンッと跳ね腹に当たってペチッと音を立てる。
「とっても元気ですね。こんなに大きくなって……」
笑みを絶やさずユカさんは俺の顔と肉棒を交互に見つめた。見るだけで触ってくれない。なんてもどかしいんだろう……。
「ちょっとお待ちくださいね」
俺の気持ちを玩ぶようにユカさんは背中を向けて、オイルの入った入れ物を手に取る。そして、たっぷりとオイルを手のひらの上に乗せると、再びこちらを向いて、よく見えるようにオイルを手に馴染ませ始めた。
ニュチュ……ニュチュ……グチュ……。オイルとユカさんの肌が密着し、いやらしい音を奏でる。
「では、失礼しますね……」
ついに、ユカさんの指が剥き出しの肉棒に……絡みついた。
「っ……!」
いきなり動かしたりはせず、肉棒の形を確かめるようにぐにぐにと握り込むだけの動作。一番感じる部分にはまだ触れられていない。なのに、背すじがゾクゾクする。
「いま手の中で、ビクンって跳ねましたよ?」
優しく、でも艶っぽい声で、ユカさんは囁いた。そして、そっと手が動き出す。といっても、激しく扱くのではない。手に満たしたオイルを肉棒に馴染ませるように塗り込み、裏筋が緩慢な動きで丁寧に擦り上げられる。
緩やかな刺激なのに、思わず俺は息を漏らしてしまう。
そんな姿を優しげに見つめながら、根元から先端に向かってゆっくりと指が滑っていく。肉竿の中腹に、そして、さらに先へ。だが、最も敏感な部分に達しようとすると、指は再び下降を始める。竿の部分だけを上下に指の腹が這い、たっぷりとオイルを塗り込めてくる……。
「すごく熱くなってますよ……。火傷しちゃいそう……」
甘く囁きながら、今度は不意にキュッと握る。強弱をつけながら上下の動きも続けられ、俺の腰は勝手に動いていた。
「すごい。お兄さんのココ、また大きくなりましたよ。十分大きくて立派なのに、まだ大きくなるんですね。……素敵ですね」
「仕事、忙しくて。結構……くっ……た、溜まってて」
「そうなんですか? それじゃ……」
指がキュッとまた肉竿に強く絡んだ。ユカさんはじっとりと俺を見つめながら、口を開いた。
「しっかり出していってくださいね。……溜まっているの」
ニッコリと微笑むと同時に、肉棒を絶妙な強さで握るとそのまま静かに上下に動かし始めた。肌に浸透したオイルのおかげで滑りもよく、ユカさんの手のひらが肉竿の表面にピッタリと貼り付いたまま擦られる。
「くぅぅ……」
気持ち良すぎる……。上下運動は徐々に速度を増し、快感も一緒に高まっていく。
「手の中でいっぱい跳ねてますよ。とっても……元気」
「ゆ、ユカさんのマッサージが……気持ち、良すぎて……はぁ……くっ……」
「そう言っていただけると、とても嬉しいです」
ふっくらとした唇に艶っぽい笑みを浮かべるユカさん。ああ、やっぱりキレイな人だ。こんなキレイな人に……してもらってるんだ。
適度な速度で上下にオイルマッサージが繰り返される。
「くすっ……」
不意にユカさんの手の動きが止まった。肉棒を掴んだまま、俺の顔をいたずらっぽく見つめる。止めないで! と叫びたかったが、そんな恥ずかしいことは無理だ。こんな中途半端な状態で終わりなのかと不安になった。
「うふ……」
また小さな笑い声を漏らして、ユカさんは親指と人差し指で、丁度OKサインのような形を作って、肉棒の胴回りをぐるっと囲んだ。そのまま先端方向へ静かに動かし、カリのところで引っかかって止まった。
カリ首の周囲が親指と人差し指の腹側に包まれ、そこもまたオイルでヌルヌルになった。ユカさんは俺の反応を確かめながら、手首を動かして、カリ首の周囲を右に、左にと擦り始めた。スパナでボルトを回すように……。
「くっ!? うぅっ!!」
「ふふっ。すごい……」
足にまで力が入る、すさまじい快感。その様子を、ユカさんは笑みを浮かべながら見つめている。
「こうしたら、いかがですか?」
指がカリ首から離れ、親指と人差し指の腹で、亀頭をクリクリと撫で、擦り出した。敏感な部分を的確に責められて、また声が漏れてしまう。
「うっ……く……」
「こっちも良いみたいですね。……あら? 何かオイルと違う感触がしますね」
意地悪そうに言いながら、爪の先が軽く尿道口を突いた。トロトロと先走り汁が溢れる様子をユカさんは嬉しそうに見つめている。
「そうそう、こちらも良いとおっしゃってましたね」
オイルにまみれた左手が、俺の胸元に伸びた。そして、乳首を中指で優しく撫でまわし始める。股間と胸元から走る電流。思わず腰が浮いてしまい、ビクッと震えた。
「ふふ……」
初めてしてもらう股間と胸元のマッサージ。とても手でされているとは思えない深い快感。もっとこの快感を味わい続けたい。だが、度重なる刺激に、俺はもっと強い欲望を求めてしまう。
やわらかい刺激ではなく、射精に繋がる……強い快感を。
亀頭を優しく撫で、尖った乳首を軽く引っぱっているユカさんに、俺はなんとか声を出して訴えた。
「ユカさん……あ、あの……」
それだけで話が通じたらしい。軽く目を閉じて頷き、また口元に笑みを浮かべる。
「出したいんですよね……? そろそろ」
俺が強く頷くと、ユカさんはジッと俺の目を見つめて妖艶に微笑み、両手を離しオイルを追加で手に取った。そして、オイルでトロトロの右手で肉棒をしっかりと握り締めてくれる。
「出そうになったら言ってくださいね」
ついに求めていた最終段階。右手が上下にゆっくりと動くと、肉棒全体がオイルでぬるぬるになる。ユカさんの暖かい手のひらがキツすぎず、緩すぎずの微妙な力加減で亀頭と、カリ首を責め始めた。
左手は再び俺の乳首を責め、尖った部分を中心にクリクリと強く撫でられた。こんな場所が、射精に繋がるほどの快感を与えてくれるとは……。
「とっても大きい……。ビクビクしてますよ……」
これまでとは違う、射精を促すための動き。手首だけではなく、腕全体で大きく動くのでユカさんの身体も揺れた。セクシーなランジェリーに包まれた、大きな乳房がぷるぷると動くので目が放せない。
その視線に気付いたらしく、ユカさんは胸をもっとよく見せるようにしてくれた。
「ん……。硬い……。素敵ですよ……お兄さん」
亀頭とカリ首を徹底的に指でリズミカルに攻め、ゴシゴシと擦ってくる。強い圧迫ではなく、快感ポイントを的確に指で刺激し撫でてくる。時々、手首を使って、今まで当たっていなかった場所も刺激するので、快感がさらに増してくる。
「すごい……どんどん硬くなってきていますね……。擦る度に、ピクピク震えて……んっ、とってもすごい」
ユカさんの視線が肉棒に集中し、軽く口元が開いていた。まるで、物欲しげにも見えるような表情。そんな横顔はやはり美人で、しかも艶めいた色気がたっぷりと溢れている。
ああ、こんな美しい人に、扱いてもらえるなんて……。
そのことに興奮度がさらに増して、一気に限界がやってきた。
「ゆ、ユカさん……。そろそろ……」
「出そうなんですね?」
「は、はい……」
「ふふっ。分かりました」
ユカさんは左手を乳首から放し、近くにあったティッシュボックスから、ティッシュを数枚慣れた手付きで摘まみ取った。
「ガマンしないで、出してくださいね」
肉棒を擦る手の動きが高速になり、締め付けも少しだけ強くなった。先走り汁がドブドブと溢れ、オイルと混合されていく。尿道口の先端にはティッシュが待機し、受け入れ体勢ができていた。
「ここに、お兄さんのいっぱい出してくださいね」
「は……はいっ……。うっ! うっ……!」
甘くて優しい言葉に導かれ、俺は抵抗することなく絶頂した。
「うっ! うっ! くぅぅぅ!」
「あっ……」
今までにない強い快感に腰が跳ね上がり、同時に大量の精子をティッシュの中に噴出した。
「すごく熱い……」
手の中で暴れる肉棒をユカさんは慌てずに宥め、さらに上下に動かして擦り続ける。
「あ……あ……くぅぅ!」
射精が、止まらない! 普段なら、絶頂の最高の快感を得ても数秒後には消えてしまう。ところが、ユカさんの手にかかると、射精が、快感が次から次へと続くのだ。
白濁液の噴出は一度で終わらず、二回、三回と繰り返された。
「最後の一滴まで、出しちゃってくださいね」
敏感になった亀頭を手のひらで撫でまわし、カリ首を親指の腹でコリコリと引っ掻くように刺激する。イった直後なのに再び射精感が盛り上がり、また噴射……。
俺は、ユカさんの手の中で、何度も何度も最高の射精を続けた。
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(C)SHIYU KUROTAKI/HERENCIA