絶対服従催眠アプリ
~憧れの先輩は僕の操り人形~
2017年10月26日
オトナ文庫
著:雑賀匡
画:G kilo-byte
原作:クレージュA
川本浩之の毎日は、つまらないことの連続だった。
眠たい目を擦りながら起きて、面白くもない授業を受けるために学園へ向かう。
これがなにより面倒くさい。
しかも、仲のよい友人がいるわけでもないので、教室では楽しそうに話をしているクラスメイトたちを横目に、スマートフォンをいじるのが日課になっていた。
容姿が優れているわけでもなく、勉強やスポーツができるわけでもない。
こんな自分に友人がいないのも当然だと思いつつも、笑いながら会話をしている連中を眺めていると、なんだか無性にイライラとした。
だらだらとした態度で授業を受け、放課後はまっすぐに家に帰る。
一緒に遊ぶ相手がいないのだから仕方がない。
もちろん、帰宅しても勉強なんかするわけがなかった。
マンガを読んだり、ゲームをしたり、暇つぶしにネットを巡回して、好みのエロ動画を見つけてはオナニーをする。
そんな毎日が面白いはずもない。
このまま何事もなく学園生活を終えるのだろうと思うと、卒業までの時間がどうしようもなく無駄で、意味のないものに感じられてしまう。
それでも浩之がサボらず学園に通っているのには理由がある。
校内のどこかで「先輩」に会えないだろうか、と密かに期待しているからだ。
先輩、光谷理恵は、浩之の憧れの人物だった。
@
二学年上である彼女と出会ったのは、数ヶ月前の朝。
いつものように晴れない気分で学園に向かっていた浩之が、俯いたまま、同じく学園に向かう生徒たちの流れの中を、揉まれるようにして歩いていた時のことだ。
「どうしたの、君。なんだか元気がないけど、大丈夫?」
突然、声をかけてきたのが理恵だった。
学園の有名人である彼女のことは、入学したばかりの頃から知っていた。
誰もが目を惹かれてしまうほどの美人でありながら、成績優秀、スポーツも万能、新体操部の部長まで務めているという才媛である。
しかも、それをまったく鼻にかけないという性格のよさ。
どれほど周囲から褒めそやされても、彼女はいつも照れ笑いを浮かべるだけで、決して思い上がることなく、あくまでも謙虚な態度を崩さない。
なにもかもが浩之と正反対の存在であり、それ故に憧れていた人物だった。
そんな理恵にいきなり話しかけられたのだ。
「あ……だ、大丈夫です」
浩之は上擦った声で答え、カクカクと頷いてみせるのが精一杯だった。
「そっか、それならいいんだけどね」
彼女はふっと優しい笑みを浮かべてみせた。
いつも遠くから眺めていた理恵と、これほど近くで、吐息が届くほどの距離で接したのは、この時が初めてだった。
まるで人形のように整った容貌。
さらさらとした柔らかそうな長い髪。
ふわりと漂ってくる彼女の香りは、思わず陶酔してしまいそうなほどだ。
いけない、と思いつつも、浩之はつい理恵の身体にチラチラと視線を走らせた。
制服のブレザーに押し込められた、魅惑的で大きな乳房。無駄なく引き締まった尻は、チェック柄のスカートを形よく突き上げている。
思わず見惚れてしまうほどのスタイルのよさだった。
「ちょっと気になったから声をかけてみたの。君、一年生よね?」
浩之の邪な視線に気付くことなく、彼女は優しく問いかけてきた。
「は、はい」
「学園は面白くない?」
「それは……」
「まだ新しい環境には慣れないだろうし、大変なこともあるかもしれないね。でも、楽しいって思わないと、毎日がつまらなくなっちゃうよ?」
「……は、はい」
「今日一日、お互いに頑張ろうね」
理恵は戸惑ったままの浩之に、そう言って笑みを向けてきたのだった。
@
その後、彼女は校内で顔を合わすたびに、親しく声をかけてくれるようになった。
いつからか名前も覚えてくれて、「川本くん」と呼ばれるようになると、浩之は舞い上がるような気分だった。
こうなると、理恵のことが気になって仕方がなかった。
学園内で彼女の姿を見るだけで胸が高鳴ってしまう。
あの優しい笑顔を独り占めできたら、どんなに幸せなことだろうかと思った。
(本当に、先輩は理想的な人だよなぁ)
あんな女性を恋人にすることができれば、今のように面白みのない毎日も、心の底から楽しく感じられるようになるだろう。
苦痛なだけだった学園生活を、変えることができるかもしれない。
そう思いつつも、浩之は積極的にアプローチをしようとはしなかった。
彼女のような才媛が、学園ヒエラルキーでも最下層の男子生徒と付き合うわけがない。自分など相手にされないだろうと承知していたからだ。
高嶺の花は、遠くから眺めていればいい。
たまに優しい笑顔を向けてくれるだけで、親しげに話しかけてくれるだけで……。
それだけで十分満足だったのだ。
けれど、そんな浩之の想いは、ある日を境に激変してしまった。
@
「はぁ……疲れた」
一日の授業を終え、ようやく解放された気分で校舎を出る。
ただ椅子に座って授業を聞いているだけだが、やる気のない浩之にとっては、この学園での時間がなによりも苦痛に感じられる。
なんとか耐えることができたのは、校内で理恵の姿を見ることができたからだ。
彼女は浩之にとって最高の癒やしであり、原動力でもあった。
(帰りも先輩に会えたら最高なんだけどな)
そんなことを思いながら、周囲を見まわしてみる。
校門を出て帰宅する生徒たちは、ひとりで歩く浩之を余所に、友人同士で話をしたり、恋人と楽しそうに笑い合ったりしていた。
どこかに理恵の姿がないだろうか、と淡い期待をした時のことだ。
「あはは……やだ、もう」
彼女の鈴のような笑い声が聞こえてきた。
願いが叶ったことに頬を緩ませながら、声がする方向に視線を向けた浩之だったが……。
(えっ?)
その表情は瞬時のうちに凍りついてしまった。
「江口くんったら。私、そんなにいつも甘えてるわけじゃないもん!」
「そうかなぁ。理恵は甘え上手だと思うけど?」
理恵が知らない男と歩いていた。
とても楽しそうな顔をしながら、寄り添い合うかのように。
(なんなんだよ、あの男っ!?)
浩之は思わず足を止め、前方を歩く彼女たちを凝視した。
「なら、もっと甘えちゃう。次の日曜日、デートしてくれる?」
「ああ……いいよ。どこへ行く?」
「欲しい本があるの。だから駅前の……」
会話の内容からして、ふたりがただの友人関係でないことは明らかだ。
理恵は男に、江口と呼んでいる男子生徒に身体をすり寄せながら、どこか媚びるような笑みを浮かべていた。
それは浩之に向けられていたものとはまるで違う。
女としての微笑みだった。
(まさか、先輩に付き合っている奴がいたなんて……)
驚きが衝撃となって身体を突き抜け、それはやがて激しい憤りとなった。
ずっと理恵に憧れ続け、その存在を癒やしとしていた浩之にとっては、なんだか裏切られたような気分だったのである。
怒りに身体を震わせながら、江口に身体を寄せる理恵を睨みつけた。
だが、彼女はそんな浩之の視線に気付くことなく、
「じゃあ……十時に噴水の前で待ち合わせね」
さらに甘えたような声を出しながら、恋人に密着していく。
「ああ、遅れるなよ」
歩くたびに揺れる大きな乳房が腕に当たると、江口は平然とした態度を装いながらも、ニヤニヤと頬を緩めている。
その様子に、浩之の憤懣は頂点に達した。
親しげな理恵たちを見ていると、強すぎる衝撃と怒りで頭がクラクラとした。
(くそっ……くそっ、くそっ、くそぉっ!!)
あんなに優しく話しかけてくれたのに。
名前を覚えてくれて、会うたびに笑顔を見せてくれたのに。
まさか恋人がいたなんて!
浩之は目を伏せながら踵を返すと、周囲を歩いている生徒たちを押しのけるようにして、いま来た道を戻り始めた。
理恵に彼氏がいるという事実を認めたくなくて。
親しげに話しかけてくれるだけでも十分だと思いつつ、心のどこかで密かに期待していた自分が情けなくて。
とにかく、少しでも彼女たちから遠ざかりたかったのである。
歩く速度が少しずつ速くなり、いつしか浩之は闇雲に走り始めていた。
どこへ向かっているのか、自分でも分からなかった。
激情に駆られて走りながらも、頭の中では理恵のことだけを考え続けていた。
遠くから眺めているだけでも構わない。
手の届かない存在として、ずっと憧れの対象になってくれるのならいい。
それならば、自分には過ぎた女性なのだと諦めもつく。
だが、誰かのものになるのだけは我慢できなかった。
あの江口とかいう男が、形のよい理恵の唇を奪うところを……彼女の魅惑的な身体を自由にすることを想像しただけで、頭がどうにかなってしまいそうだった。
ただでさえ漫然とした日々の中で、理恵は唯一の心のよりどころなのである。
このままでは、なにも手につかなくなってしまうだろう。
(なんとかして、先輩を奪うことはできないか)
そんなことを考えながら走り続けていた浩之だが、だらだらとした毎日を送っていたせいか、情けないことに十分も経たないうちに息が切れてきた。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
足を止めて、大きく肩で息をする。
顔を上げて周囲を見まわすと、すぐ傍に児童公園があった。
困惑したままの気分を少しでも落ち着けるため、とりあえず敷地内にあるベンチで休もうと思い、ふらふらとした足取りで歩き出した時のことだ。
目の前を一組のカップルが通り過ぎていった。
こんな時に、と不快な気分になる。
どうしても理恵と江口のことを思い出してしまうため、幸せそうな顔をしている恋人同士など見たくもなかったのだが。
「……すごい美人だな」
浩之は思わず目を奪われてしまった。
男のほうは冴えない容貌をしているのに、連れている彼女は不釣り合いなほどの美人だ。
スタイルもよく、まるでモデルのようだった。
こんな男でも美人をものにすることができるんだろうか、と少しうらやましく思いながら目で追いかけていた時のことだ。
男が小脇に抱えていた荷物の中から、小さな紙袋が転がり落ちた。
「あ……ちょっと、落ちましたよ」
浩之は反射的に声をかけた。
けれど、男は恋人とイチャつくことに夢中になっているのか、気付くことなく歩き続け、そのまま近くにあった路地へと消えていった。
「あ~あ、どうするんだよ」
とりあえず男が落とした紙袋を拾い上げる。
十五センチ四方の小さな袋だったが、なにやら硬いものが入っているらしい。
とりあえず確認してみようと、当初の予定通り公園内にあったベンチに腰掛け、紙袋を開いて入っていたものを取り出してみた。
中から出てきたのは、古いタイプのMP3プレイヤーだった。
いくつかの曲が入っているようだ。
試しに内蔵スピーカーを使って聴いてみたが、どれも音楽というようなものではなく、ただの音という感じだ。
しかも、なんだかぼんやりとした印象のものばかりである。
変な趣味だなと思いつつ再生を止めた時、紙袋の中にはMP3プレイヤーだけではなく、小冊子が入っていることに気付いた。
「取扱説明書……かな?」
取り出してみると、表紙は真っ白でなにも書かれていない。
不思議に思いながら小冊子を開き、思わず眉根を寄せる。
「……なんだこれ?」
最初の頁に「これは催眠音声の説明書です」という見出しがあったのだ。
怪訝に思いながらテキストを読み進めていくと、そこにはとても信じられないような解説がなされていた。
聴いた相手を催眠状態にする音。
使用者が催眠状態になることを防止する音。
催眠状態を解除する音。
おそらく、MP3プレイヤーに入っている音のことだろう。
「これ……本当なのかな?」
浩之は思わず首を傾げた。
なんだか手の込んだイタズラをされているような気分だったが、もしこれが本物であるとしたら、様々な使い道があるだろう。
(そうだな、たとえば女性を意のままに操ることだって……)
そう考えた瞬間、はたと気付く。
これを落とした男は、冴えない外見とは不釣り合いなほどの美女を連れていた。
もちろん、容姿以外の魅力があるのかもしれないが、この催眠音声を利用して手に入れたという可能性は否定できない。
いや、むしろそのほうがすんなりと納得できる。
「もしかして、本当に使えるのかも」
胸の中にじわじわと高揚感が広がっていく。
これを使えば、理恵を自分の思い通りに操れる、どんなエッチなことだって、させることができるかもしれないのだ。
眉唾物ではあるが、やってみても損はない。
どうせ、彼女に江口という恋人がいる事実は変えようがないのだ。
本来であれば、浩之は嫉妬に身を焦がす程度のことしかできない。
そんな時に、偶然にもこのMP3プレイヤーが手に入ったというのは、なにかの啓示のような気さえしてくる。
「よ、よし……やってやる。やってやるぞ!」
江口が理恵に対して、どこまでの行為をしていたのかは分からない。
だが、この催眠音声を使ってそれ以上のことをさせれば、もしかすると彼女を自分のものにできるかもしれないのだ。
(いや、必ずそうしてやる)
浩之は手の中にあったMP3プレイヤーを握りしめた。
@
催眠音声を手に入れてから一週間後。
理恵を相手に試してみようと考えた浩之は、あれこれと手を尽くした末に、ようやくその準備を終えることができた。
催眠音を聴かせる。
ただそれだけのことなのだが、これがなかなかに難しかった。学年が違う上に、人気者である彼女に近付くチャンスが巡ってこなかったのである。
とりあえず、試しに手近な相手でテストをしてみるという方法もあった。
けれど、浩之の目的はあくまでも理恵を自分のものにすることであり、クラスの女子生徒に催眠をかけてみる気にはなれなかったのだ。
やきもきしながら数日が過ぎた。
このままだとなにもできない、と苛立ちながら、いつものように教室でスマートフォンをいじっていた際、ふとあることを思いついた。
(催眠音を聴かせるだけなら、直接会わなくてもいいんじゃないか?)
近付くことができなくても、電話でならそれが可能かもしれない。
浩之はそれまでとは違うアプローチに気付いて歓喜したが、それでもすぐに実行に移せたわけではなかった。
そもそも、理恵の携帯電話番号を知らないのである。
一番手っ取り早いのは本人に訊くことだが、それができないから苦労しているのであり、あれこれと手を尽くし、なんとか彼女の携帯番号を探った。
親しい友人のいない浩之にとっては難題だったが、結局はクラスメイトに頼み込んで教えてもらうことに成功した。
人気のある理恵の携帯番号は、密かに生徒の間に出まわっているらしい。
ただ、実際に電話をかける者はほとんどおらず、憧れの人物の携帯番号を知っているという満足感に浸るためのようだ。
(僕はそんなことで満足はしないけどね)
念願の携帯番号を手に入れた日の放課後。ひとり教室に残った浩之は、部活動が終わる時間を見計らって、スマートフォンを取り出した。
アドレス画面を開き、理恵の番号を呼び出す。
これですべての準備が整ったのだが。
しばらくの間、浩之は画面を見つめたまま固まってしまった。
まだ心に躊躇いがあったからだ。
もし、催眠が効いたら、彼女を思い通りにすることができたら、あの魅惑的な身体を自分のものにしてしまうつもりだった。
欲望のままに犯し、ずっと秘めていた想いを成就させる。
江口から奪うためにはそれしかない。
そんな想像をすると胸が高鳴るほどの興奮を覚えるが、同時に全校生徒の憧れである理恵を穢すことに、どうしても畏れのようなものを感じてしまう。
そんなことをしていいんだろうか。
なにより、催眠など本当に効くのだろうか。
スマートフォンを手にしたまま、しばらく迷いの中にいた浩之だが。
やがて小さく首を横に振り、意を決したように顔を上げた。
「……やるしかないんだ!」
このままだと、現状は変えられない。理恵と江口が仲睦まじそうにしているところを、指を咥えて眺めていることしかできないのだ。
せっかく手に入れた力なのである。使ってなにが悪い、と自分に言い聞かせながら、震える指で彼女に電話をかけた。
数回の呼び出し音がした後。
『……はい』
と、受話口から理恵の躊躇うような声が聞こえてきた。
知らない番号から電話がかかってきたことを訝しんでいるようだ。
浩之は用意しておいたMP3プレイヤーをスマートフォンに近付けると、再生ボタンを押し、内蔵スピーカーから『聴いた相手を催眠状態にする音』を流した。
相変わらず、間延びした、ぼんやりとした音。
効いてくれ、と願いながら再生を続けていると、
『もしもし、どなたで……っ……ん……』
彼女の問いかけが不意に途切れ、代わりに受話器から吐息が聞こえてくる。
(成功したのか?)
理恵と一緒に催眠状態になってしまわないため、浩之は予め『使用者が催眠状態になることを予防する音』を聴いていた。
そのため、彼女が催眠状態に入ったのかどうか分からない。
まだ半信半疑ではあったが、暗示をかけるのは今しかないと思い直す。
「……先輩、僕の声が聞こえますか?」
『はい……聞こえています』
質問に答える理恵は、いつもの真面目で優しい彼女とは明らかに違う。
ぼうっとした無機質な声。
浩之は催眠が効いていることを願いながら、最初の命令を口にした。
「これから、僕の指示に従ってください」
『はい……分かりました』
「まず、誰にも知られないように、どこか人目のつかない場所に……そうですね、校舎裏に行って僕を待っててください。いいですか?」
『はい』
従順に答える理恵の声を聞いて、今度こそ確信した。
この催眠音は間違いなく本物だ。
彼女は疑問を口にしたり、躊躇ったりすることなく、浩之の命令に応じてみせた。
言葉だけで、意のままに操ることができたのである。
(よしっ!)
浩之は通話を終えると、MP3プレイヤーの再生を止め、逸る気持ちを抑えながら椅子から立ち上がり、足早に教室を出た。
@
指定した校舎裏へとやってきた浩之は、周囲に人気がないことを確認しつつ、目的である理恵の姿を探した。
(先輩は間違いなく来ているはずだ)
期待と興奮で胸が高鳴り、手のひらにはじっとりと汗が滲む。
あまり足音を立てないようにゆっくりと歩き、薄暗くて人目につかない、校舎裏の一番奥まっている場所へと向かう。
「あ……」
理恵がいた。
なにをするでもなく、ぼんやりと立ち尽くしている彼女の姿を見た時、浩之は抑えようもないほど気分が高揚してくるのを感じた。
(いや待て……落ち着け)
念のため、理恵が本当に催眠状態にあるのか確認してみる必要がある。
浩之は数メートルの距離まで近付き、彼女の様子を窺ってみた。
やはり明らかに普段とは違う。いつも澄んでいる瞳には光がなく、焦点の合っていない、濁ったレンズのようになっている。
「せ、先輩……こっちを見て」
喉を鳴らしながら、恐る恐る声をかけてみた。
すると、彼女はぼんやりとしたままの表情を浩之に向けてくる。まるで生気の感じられないその様子は、まさに操り人形という感じだった。
浩之はさらに理恵に近付くと、新たな命令を口にする。
「先輩……これから僕がなにをしても、絶対に騒いだりしないでください」
「はい」
「じゃあ、まずは……そこに横になって」
「はい」
彼女はまったく躊躇いをみせなかった。
命じられた通り、校舎裏のコンクリートの上に身体を横たえていく。
制服が汚れるのも構わず、全身を投げ出すような感じだ。
催眠音が効いていることは、もはや疑うべくもない。
理恵が指示通りに動いている様子を見て、浩之は心の底から歓喜した。
これで彼女を自分のものにできる。
ずっと遠くから眺めているだけだった身体が、オナニーをする際、何度オカズにしたか分からない理恵の肢体が、手を伸ばせば届く距離にあるのだ。
浩之は生唾を呑み込みながら、無防備に横たわる彼女に近付いた。
(やっぱり、先輩の身体はすごい)
スタイルがよいとは思っていたけれど、間近で見るとひときわ魅力的だ。
はちきれんばかりの大きな胸が、呼吸のたびにゆっくりと上下し、まるで誘うようにブレザーを押し上げている。スカートから伸びた太股は、キュッと細く引き締まっているにも拘わらず、とても艶めかしく感じられた。
どこを見ても一級品の身体だ。
そっと顔を突き出し、改めてきれいに整った理恵の顔を覗き込んでみた。
やはり、完全な催眠状態にあるようだ。
目の焦点は合っておらず、鼻にかかったような吐息を漏らしているだけで、投げ出した身体を自発的に動かそうとはしていない。
おそらくは、浩之の命令を待っている状態なのだろう。
(先輩を好きにすることができる……セックスだってできるんだ)
そう思っただけで身体が熱くなった。
すでにズボンの中では、ペニスが硬く勃起を始めている。
今すぐにでも理恵と繋がりたい、という衝動に駆られたものの、すぐに実行に移さなかったのは、どうしても懸念を拭いきれなかったからだ。
行為に夢中になっていると、彼女が催眠から覚めてしまうのではないか。
そんな不安が浩之を迷わせていた。
だが、だからといってなにもしないという選択肢はない。
「いきなり激しくしたりしなければ……大丈夫、だよな?」
浩之は自分に言い聞かせるように呟くと、理恵の傍にしゃがみ込み、ブレザーからこぼれ落ちそうなほどの乳房を間近から眺めた。
(本当に大きいな)
制服の上から見ただけでも、かなりの迫力がある。これでブラウスや下着を剥ぎ取ると、どれほどの大きさがあるのか見当もつかないほどだ。
「よ、よし……とりあえず、脱がせてみよう」
震える手を伸ばし、ブラウスのボタンを外していく。
ピンク色の可愛らしいブラジャーが露出したが、じっくりと鑑賞するような余裕はなく、浩之は昂ぶる欲望に突き動かされるように、上へと押し上げていった。
途端、ぶるんっと勢いよく彼女の乳房が飛び出してくる。
「こ、これが……先輩の、おっぱい……」
思わず、ゴクリと喉を鳴らしてしまう。
女性の、本物の乳房を見たのは初めてのことだったが、想像していたよりも艶めかしく感じられた。大きな膨らみは磁器のように白く、その頂点では濃いピンク色をした乳首がいやらしく震えている。
その様子に、浩之の興奮はさらに増していった。
「せ、先輩……舐めるから、動かないでくださいよ……!」
じっくりと揉み上げてみたい気持ちもあったが、なによりも理恵の乳房を、女の象徴を間近に感じたくて、彼女の大きな胸に顔を寄せていった。
舌先が乳首に触れた途端。
「んああっ……んぅっ……んぁああ……」
理恵の身体がビクビクと大きく震えた。
初めて聞いた彼女の喘ぎ声は、とても甘くて可愛らしい。
その声を聞いた浩之の中で、プツンと音を立ててなにかが切れた。
理性とともに躊躇いが吹き飛んでしまい、目の前にある乳房にむしゃぶりついていく。
「先輩のおっぱい……すごく美味しい!」
夢中になって舌を動かし、弾力のある乳首を舐め上げた。
「ああ……んっ、ふぅう……」
愛撫をするたびに声を上げる理恵の肌には、いつの間にか、うっすらと汗が浮かび始めており、舌先にもしょっぱい味を感じるようになった。
(先輩の汗の味……)
そう思うと嫌悪感など湧かなかった。
いや、それどころか、もっと味わいたい、堪能したいと思ってしまう。
舌先で弾くような愛撫を繰り返していると、次第に乳首がぷっくりと頭をもたげ、ぷりぷりとした弾力が伝わってきた。
彼女が感じ始めている。
自分の愛撫に、身体が反応をしているのだ。
そう思うと嬉しさが込み上げてきて、浩之は徐々に愛撫を激しいものにしていった。
乳肉を口いっぱいに頬張り、乳首ごと思いっきり吸い上げる。
「あうぅんっ!? ひゃあ……はぁあああ……っ!」
その強い刺激に、理恵の身体が跳ね上がった。
背中を仰け反らせる動きに、重量のある乳房が大きく弾む。
催眠音で正気を失っていても、身体は敏感に反応を示すらしい。まるで胸の先端から伝わってくる快楽を持て余すかのように、彼女はブルブルと全身を震わせた。
「すごい……乳輪もだんだん膨らんできて……んむっ!」
膨張する乳輪に舌の腹を当て、擦り上げるように舐めまわした後、唇を窄めて、完全に勃起した乳首を音を立てながら吸い上げる。
「んぁああ……っ!」
性感帯を乱暴に刺激され、理恵の唇からもどかしげな吐息が漏れ出した。
肌に浮かぶ汗の量が増えると同時に、呼吸も速まっている。
頬をうっすらと朱に染めながら、まるでなにかに耐えるかのように、両脚をもじもじと擦り合わせているのは、間違いなく愛撫に感じているからだろう。
「……もっと舐めてあげますからね、先輩」
浩之はそう囁きかけると、彼女の白い乳房に顔を押しつけていった。
もっと感じさせたい。気持ちよくしてあげたいと念じながら、舌先で乳輪を舐めまわし、乳首を唇で強く挟み込む。
「ひぁっ……んうぅぅううっ!」
乳房を好き勝手に弄ばれながらも、理恵はまったく抵抗を示さなかった。
唇から喘ぎ声を漏らし、ビクビクと全身を波打たせているだけだ。
その耐えるような表情が、浩之の情欲を増大させていく。
「先輩……先輩っ!」
欲望のままに彼女の乳房を吸い上げ、舌先をうねらせる。
激しく責め立てられ、理恵の乳首はますます硬く膨れ上がっていった。
「んっ……はぁ……んんっ」
どれほど強い愛撫を加えても、施した催眠が解ける気配はない。
うっすらと開いた唇からこぼれる吐息は荒いけれど、やはり瞳の焦点は合っておらず、身体も人形のように投げ出されたままだ。
(次に進んでも大丈夫みたいだな)
乳房を舐めただけでも、これほど喘いでみせるのだ。
アソコを、彼女の大切な部分を触ったりしたら、一体どんな反応をするのだろうか。
高鳴る胸の鼓動を抑えながら、浩之は理恵の下半身へと手を伸ばしていった。
「んあ……っ!?」
スカートの中に手を潜り込ませると、彼女がピクッと身体を震わせた。
少し驚いてしまったが、やはり抗う様子はない。催眠状態にありながらも、女性としての本能が反応してしまったということなのだろうか。
気を取り直してさらに手を伸ばすと、薄くて、さらさらとした布の感触がした。
「これが先輩のパンツ……かな……」
理恵の下着に触っている。
それだけでも十分興奮してしまったが、まだ満足できたわけではない。これは序の口にすぎない。本当に触れたい部分は、このショーツの奥にあるのだ。
浩之は思いきってスカートを捲り上げた。
途端、視界に飛び込んできたのは、彼女の下半身をぴっちりと覆っているショーツ。
ブラジャーと同じピンク色だった。
「せ、先輩……少し腰を上げて」
「……はい」
小さな声で命じると、理恵は素直に腰を浮かせる。
浩之はショーツの端に手をかけると、ゆっくりと引き下ろしていった。
これから彼女の陰部を目にするのだと思うと、さすがに緊張してしまい、下着を掴んだ指先がわずかに震えてしまう。
「うわっ……こ、これが先輩のオマ○コ……か」
ショーツを膝まで引き下ろした浩之は、露出した陰部を見て思わず声を漏らした。
何度も妄想した理恵の女性器。
それが今、浩之の目の前にさらけ出されている。
元から生えない体質なのか、それとも意図して手入れをしているのか分からないけれど、彼女の股間に陰毛はなかった。
だが、それだけに陰部をはっきりと目視することができた。
ぴっちりと閉じ合わさった陰裂。
その上にあるクリトリスは、まるで小さな蕾のようだ。
いつも真面目な理恵の股間にも、こんな卑猥な器官がある。そう思うと、なんだかすごく不思議な感じがした。
初めて目の当たりにした彼女の中心は、想像していたよりもきれいで……。
予想よりも、何倍もいやらしかった。
理恵が呼吸を繰り返すたび、外気に晒された秘裂がヒクヒクと蠢く。その様子は、まるで男のモノを欲しがっているようにも見えた。
(ここにチ○ポを挿れるんだ……)
これから彼女と繋がる。ひとつになる。セックスをする。
そう思っただけで、股間のペニスが痛いほどに膨張した。少しでも早く理恵の中に、膣内に入りたいと訴えているかのようだ。
「あ、焦っちゃ駄目だ」
浩之はそう呟きながら、まずは彼女の膝に絡みついていたショーツを完全に脱がせて、ゆっくりと両脚を左右に開いていく。
女性のアソコにどういう愛撫をするのか。
経験はなくても、エロマンガやネットのエロ動画などを見て、それなりの知識は持っているつもりだった。けれど、実際に女性器を前にすると、緊張と興奮が入り混じり、とても冷静ではいられなくなってしまう。
(と、とにかく濡らさないと……っ)
女性の陰部が潤わなければ、挿入することはできない。
そのことだけを念頭に置いた浩之は、乳房の時と同じように、まずは手で愛撫をするという段階をすっ飛ばして、いきなり理恵の股間に顔を寄せた。
冷静であろうと思いつつも、昂ぶり続ける興奮に、やはり焦りは隠せなかった。
唇を開き、たっぷりと唾液を乗せた舌を彼女の陰裂へと伸ばしていく。
花弁を軽く舐め上げた途端。
「んうっ!? あっ……はぁあああっ!」
理恵の身体がビクッと大きく跳ね上がり、唇からは悲鳴のような声が上がった。
乳首を舐められるよりも感じるのか、彼女は浩之が舌を動かすたびに切なげな声を上げ、内股を震わせ続けた。
催眠状態にある理恵が、現在の状況をどの程度理解しているのか分からない。
思考は正常に働いているけれど、命令に逆らうことができないのか、それとも、眠っている時のように意識がないのだろうか。
いずれにせよ、彼女が望んでいない行為であることだけは確かだ。
陰部を舐められるたび、悩ましげに腰をよじり続けている。
けれど、浩之はそんな彼女に頓着しなかった。
そんな余裕はなかった、というほうが正しいだろう。
(これが、先輩のオマ○コの味……!)
初めて味わう女性器に興奮した浩之は、ただ夢中で舌を上下させ続けていた。
ショーツによって覆い隠されていた彼女のそこは、汗で蒸されていたせいか、わずかにしょっぱくて、舌先にピリピリとした刺激を伝えてくる。
けれど、それ以上に甘酸っぱく、ふくよかな陰部の感触に興奮を煽られた。
秘裂を舌の腹で撫で上げると、奥からじんわりと温かな液体が滲み出してくる。
これが愛液なのだろうと思いつつ、舌を動かす範囲を広げて、理恵の身体の中でもっとも敏感な部分を責め立ててみた。
「ふあっ!? んっ……はぁあああっ!」
彼女の反応は、今までの中で一番強いものだった。
鼻にかかったような喘ぎ声を上げ、肢体を痙攣させるように震わせている。
(先輩、僕にオマ○コを舐められて感じてるんだ!)
わずかに顔を上げて様子を窺ってみる。
元から焦点の合っていなかった理恵の瞳は、いつしか潤んだものになっており、快楽で蕩け始めているかのようだった。
秘裂の上にある小振りなクリトリスも、さっきよりも膨らんでいる気がする。
「はぁ……もっともっと、舐めてあげますからね」
「んはぁあっ! んぅ……んぅうううっ!」
肉芽を舌で軽く転がすと、彼女は全身に電気を流されたかのように大きく痙攣した。
同時に、それまでは滲み出る程度だった愛液が、びゅっびゅと勢いよく飛び出してきて、浩之の口腔内を生温かさで満たしていく。
ぴったりと閉じ合わさっていた秘裂も、クンニを繰り返すうちに緩み始めている。
そのわずかに綻んだ様は、咲きかけの蕾のようにも思えた。
「どうですか、先輩。気持ちいいですか? もっと舐めて欲しいですか?」
「んぅ……はぁあ……んんっ」
理恵は浩之の問いかけに答えず、ただ吐息を漏らすだけだった。
催眠状態にある間は、自由に操ることはできても、質問に答えさせる、というようなことはできないのだろうか。
もっとも、浩之も答えを期待したわけではなかった。
たとえ拒絶されたところで、行為をやめるつもりなど毛頭ないからだ。
「存分に感じさせてあげますからね」
一方的に告げて、熱を帯び始めた彼女の陰部に口づけていく。
秘唇を舌で押し広げ、膣内をねっとり舐め上げる。途端、彼女の身体が大きく仰け反り、それまで以上に濃い愛液が吹き出してきた。
口の中いっぱいに理恵の味が広がっていく。
「はぁ……先輩のオマ○コも、オマ○コ汁も……すごく美味しい!」
膨れ上がる欲望に抗えず、浩之は愛液を啜り上げ、秘唇を貪った。
「あああ……んんっ、んぁあああ……!」
彼女も拒絶することなく、全身で愛撫を受け止めていく。
催眠のせいで、最初から理性が吹き飛んでいるためだろうか。
女としての本能に目覚め始めた理恵は、浩之から与えられる快楽を身体に染み込ませるかのように、切なげに身をくねらせ続けている。
まるで誘っているかのような動きに、もはや情欲は限界に達しようとしていた。
「よ、よし……じゃあ、次は……セックス、させてもらいますよ」
理恵の股間から顔を上げた浩之は、もどかしげにズボンのファスナーを下ろした。
すでに、ペニスは限界まで勃起している。
下着に引っかかって、なかなか取り出せなかったほどだ。
ようやく解放された肉棒は、勢いよく天を仰いでいる。ここまで大きく、硬くなったペニスを見るのは、浩之自身も初めてのことだった。
「そ、それじゃ……挿れますよ、先輩」
先走りの滲む亀頭を見せつけながら、彼女の太股に手をかけた時のことだ。
「ん……だ、ダメェ……」
うっすらと開かれた理恵の唇から、そんな言葉が漏れ出してきた。
「えっ!?」
「い、いや……やめてぇ……ダメ……」
驚いて視線を向けると、彼女は虚ろな瞳をしたまま拒絶の言葉を繰り返す。
どうやら、完全に意識を失っている、というわけではないようだ。
催眠状態にあるため、浩之の命令に逆らうことはできないけれど、わずかに残っている理性が、恋人以外のペニスを拒否しようとしているのだろう。
「……くそっ!」
浩之は思わず歯噛みをした。
理恵の心の奥底にいる江口の存在が、忌々しくてたまらない。
「今、先輩を支配してるのは僕なんだよっ! いくら拒絶したって無駄だ。僕の命令から逃れることはできないんだ!」
浩之は吐き捨てるように言うと、彼女の両脚を大きく左右に開いていった。
これまで何度も妄想してきた理恵の牝穴。その愛液に潤んだ柔らかそうな秘裂に、浩之はガチガチに強張ったペニスの先端を押し当てていった。
「いくよ、先輩!」
「だ、ダメ……んんっ、んぁあああああっ!」
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